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旅客機のエンジンが前傾している!?
旅客機を真横から見てみると
空港で旅客機ウォッチングをしている方には今後注視して貰いたいのですが、旅客機を真横から見たとき、主翼にぶら下がっているエンジンの空気取り入れ口(インレットカウル)が若干ながら前傾しているのをお気付きでしょうか!?
かくいう私も最近気づいたのですが・・・。
ほんの僅かな前傾なので気付きにくいかもしれませんが、これもちゃんとした理由に基づく旅客機の設計だそうです。
エンジンの前傾は空気取り込み効率化のため
結論から言ってしまいますが、旅客機が高高度で巡航している際、僅かに機首を上げて飛行しています。
この時、地上では前傾していたインレットカウルは進行方向に対し正対するようになっています。つまり、巡航時、エンジンに最も空気を取り込めやすい構造になっているのです。
旅客機が巡航時にも機首上げしている理由
空気が薄い高高度では機首を上げて揚力を得ている
では、どうして巡航時の旅客機が機首を上げて飛行しているのか?、を説明します。
高度が上がるにつれて空気が薄くなることはご存知だと思います。そして飛行機が飛行するには揚力が必要です。空気の薄い高度で飛行機が揚力を得るために、機首を上げて巡航しているのです。
この時の機首上げ角度が2.5度から3度となっています。
つまり、機首を約3度上げた際にエンジンのインレットカウルは進行方向に正対するので、機首上げしていない地上ではインレットカウルは3度程度の前傾となっているのです。
お解りになって頂けましたでしょうか?
地上で発見できるちょっとした旅客機の構造にもちゃんと理由が存在することがわかりましたね。これから空港で旅客機ウォッチングされる方は機体の構造にも目を凝らしてみれば新たな発見が生まれるかもしれません。
以上について私の知見から説明したような記事になっていますが、実は、私の疑問を日本航空さんに投げかけたところ、下記のように親切にご回答頂いたのでした。
日本航空さんへの質問と回答
インレットカウルの前傾構造については日本航空さんにも確認し、以下回答を得られていますので共有します。日本航空さんからは巡航時の速度(巡航速度)とする理由にまで一歩踏み込んだ回答を得られていることを付け加えます。
<質問①>
ボーイング787型機など飛行機を真横から見たときに、エンジン前方のカウルが斜め(若干下向き)になっていますが、これは飛行機の巡航時の機首上げによりエンジンを大気に対し正対させ、空気を効率よく取り込むためでしょうか。
<回答①>
ご理解いただいているとおりでございます。飛行機は巡航中、若干、機首上げの状態で飛行しておりますので、効率よく空気を取り込むためにインレットカウルは少し下向きに取り付けられています。
<質問②>
巡航時に機首上げした方がよい理由があれば、ご教示いただけませんでしょうか。
<回答②>
仮に、飛行機が最大速度で飛行し続けると、機内のお客さまに振動や揺れが大きく伝わり、「快適な空の旅」とはならず、また大きな騒音が生じるため、環境へ影響を及ぼすことが懸念されます。さらには、膨大な燃料消費にもつながります。上述をふまえ、巡航中は、快適で、かつ経済的な速度まで推進力を絞ることが必要となります。しかし、そのままの姿勢で飛行すると、前方に進む力が弱くなり、飛行機は降下し始めてしまいます。そこで飛行機は、機種やその時の重量にもよりますが、2.5度から3度程度、機首を上に持ち上げながら前に進んでいくような仕様になっております。
まとめ
以上より旅客機のエンジンが前傾している理由は以下の通りです。
またひとつ、なるほど!!が増えましたね。
WHY!?
どうして旅客機のエンジンは前傾しているの!?
理由①
旅客機が巡航時に最大速度で飛行し続けると、乗客に揺れや振動が大きく伝わり、快適な空の旅とならない。
理由②
旅客機が巡航時に最大速度で飛行し続けると、膨大な燃料の消費にもつながる。
理由③
旅客機が巡航時に最大速度で飛行し続けると、大きな騒音が生じるため、環境へ影響を及ぼすことが懸念される。
理由④
したがって、巡航時の旅客機は快適かつ経済的な速度まで推進力を絞る必要がある。
理由⑤
しかしながら、推進力を絞ったとしても、そのままの姿勢で飛行すると、前方に進む力が弱くなり、旅客機は降下し始めてしまう。
結論
つまり、機首を約3度上げた際にエンジンのインレットカウルは進行方向に正対するので、機首上げしていない地上ではインレットカウルは3度程度の前傾となっているのです。