蒼空に近づきたくて

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キャセイ航空が保有する世界で最初に製造されたボーイング777型機が故郷アメリカの航空博物館で展示保管されることに

 

ボーイング社テスト機として使用されていた777型機の初号機がキャセイ航空より引退しアメリカの航空博物館で展示されることになった

キャセイ航空のボーイング777-200型機がアメリアリゾナ州の砂漠にある航空博物館にて展示されることになり、キャセイ航空での約18年間にわたる運航を終え、この度生まれ故郷であるアメリカに里帰りのうえ隠居し余生(と言っても永久保存!)を送ることになりました。

この飛行機の機体登録番号は中国籍B-HNL」なのですが、その前の登録番号は米国籍「N7771」だったのです。

勘の鋭い方はおわかりになったかと思いますが、登録番号から推測できるように、実はボーイング777型機の1番機なのです。

という理由から、この飛行機が航空博物館で展示されるのも納得できますね、まさにボーイング社にとって記念すべき飛行機だったのです。

ただ、航空会社にデリバリーされた最初の777型機はユナイテッド航空宛でした。
ん?と思われるかもしれませんが、1番機であるN7771はボーイング社でテスト機として使用され、2000年にキャセイ航空にデリバリーされたのです。

  • 機体登録番号:B-HNL
  • 試験機番号:WA001(米国籍機体登録番号:N7771)
  • 型式:777-267
  • 製造メーカー:ボーイング
  • 製造番号:27116/1
  • 登録:2000年12月

The 1st Boeing 777 | B-HNL(Photo by Cathay Pacific)

The 1st Boeing 777 | B-HNL(Photo by Cathay Pacific)

The 1st Boeing 777 | B-HNL(Photo by Cathay Pacific)

The 1st Boeing 777 | B-HNL(Photo by Cathay Pacific)


ボーイング787型機の1番機がセントレア空港に建設中の「FLIGHT OF DREAMS」にて展示保管されるように、ボーイング社にとって記念すべき機体はメモリアル機として各地の博物館にて保管されるようになっています。

ちなみに、ボーイング787型機の2番機でANAマーキング仕様となっている機体は、今回のキャセイ航空の「B-HNL」と同じアメリカ・アリゾナ州にある「ピマ航空宇宙博物館」に寄贈され展示されます。

 

キャセイ航空が保有する5機の777-200型機のうち「B-HNL」だけが貨物室仕様が異なる

さて、ここからは少しマニアックなお話です。

キャセイ航空にてボーイング777-200型機はB-HNLも含め全部で5機保有(B-HNA、B-HNB、B-HNC、B-HND、B-HNL)していましたが、「B-HNL」だけが外観上から判別できるように機体仕様が異なっていました。

それはどこか?

ボーディングブリッジが付くのとは逆側、つまり飛行機の機種側に向かって右側には旅客キャビンの下部に設置されている貨物室へのULD搬出入口となるドアが設置されていて、ドアは前方と後方にそれぞれひとつずつ(本当はバルク室用の小さなドアも後方にある)設置されているのですが、「B-HNL」の後方貨物室のドアの大きさだけは他のキャセイ航空保有ボーイング777-200型機とは異なるのです。

貨物室ドアの大きさが異なるとはどういうこと?

旅客機の貨物室ドアの大きさは、貨物室内に積載されるULDの大きさに基づき大きいドアもしくは小さいドアが装備されることになります。

大きなドアのある貨物室にはPALLETなどの大きなULDもしくはPALLETよりも小さなULDを収納することができます。

一方、小さなドアの貨物室にはLD3、もしくはLD3ふたつぶんの大きさであるHALF PALLETや底部がHALF PALLETと同じ形のコンテナ(ALF、LD6)を収納することができます。

そして、前方貨物室と後方貨物室のドアの大きさ、つまり貨物室に収納できるULDの種類は航空会社によって異っているのです。おそらく、貨物室の仕様は航空会社がボーイング社に発注する際のオプションとして選択できるのでしょう。

では、航空会社や機種による貨物室ドアの仕様について以下の通りご紹介します。

 

日本航空(JL)

ボーイング777-200ER

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:大型ドア

ボーイング777-300ER 

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:小型ドア

全日本空輸(NH)

ボーイング777-200ER

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:大型ドア

ボーイング777-300ER 

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:大型ドア

ANAボーイング777-300ER型機の貨物室ドアの大きさ(ANA Cargo)

ANAボーイング777-300ER型機の貨物室ドアの大きさ(ANA Cargo)

キャセイ航空(CX)

ボーイング777-200(B-HNL限定)

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:大型ドア

ボーイング777-200(B-HNL以外)

  • 前方貨物室:大型ドア
  • 後方貨物室:小型ドア

ボーイング777-300ER

  • 前方貨物室:大型ドア 
  • 後方貨物室:大型ドア 

 

貨物室ドアのサイズ

大型ドアの場合(貨物室に大きなULDを積載可能な場合)

  • 幅:106インチ(約269cm)
  • 高:67インチ(約170cm)

小型ドアの場合(貨物室に小さなULDのみが積載可能な場合)

  • 幅:70インチ(約178cm)
  • 高:67インチ(約170cm)

 

このように航空会社3社のみの比較ですが、同一機種であったとしても航空会社によって仕様が異なることがおわかり頂けたかと思います。

航空会社の方針が貨物室にしっかりと現れています。私見ですが、旅客手荷物を収納するULDは基本的にLD3であり、旅客だけでお腹いっぱいというような航空会社はLD3だけが積載できればそれでいい貨物室仕様になっていて、貨物も輸送して安定した収益性を高めたい航空会社は貨物積載用のPALLET等の大きなULDを積載できる貨物室になっているような気がします。

したがって私が思うに、日本航空ボーイング777-300ER型機は大きなULDを積載可能なのは前方貨物室のみとなっているので、極端に言えば貨物軽視という見方ができます。全日空と貨物事業の格差が大きくなっている状況において、後方貨物室にも大型の貨物を積載できる仕様とすべきではないでしょうか?

前方貨物室のみに重い貨物を積載すると飛行機が飛べなくなってしまう

日本航空ボーイング777-300ER型機は前述の通りPALLETは前方貨物室のみにしか積載できません。大きな貨物(重い貨物)の場合はPALLET ULDに積み付けすることになるので、前方貨物室には必然的に貨物が固まり、旅客手荷物が収納されたLD3が積載される後方貨物室と比較して前方重量が重くなり、飛行機はバランスアウトを引き起こします。そのような状態で飛行機が離陸しようとすれば、機種が持ち上がらずに墜落という事態が発生する可能性があります。

 

バランスアウトした場合の対応

バランスアウトしたままの状態で飛行機を出発させることはあり得ません。従い、もしバランスアウトした場合はそれを解消しなければならないのですが、その対応策について述べたいと思います。

パターン1:前方貨物室からPALLET ULDを取り降ろす

バランスアウトの要因となっているPALLET ULDを前方貨物室より取り降ろし、飛行機の前後のバランスを適正化する。

パターン2:前方貨物室に積載される高重量貨物を後方貨物室に移動させる

前方貨物室のPALLET ULDに積まれている高重量貨物を取り降ろし、後方貨物室に積載可能なHALF PALLETに積み付けし、飛行機の前後のバランスを適正化する。

このように、前方後方どちらの貨物室にもPALLET ULDが積載できるようになると貨物輸送における柔軟性が広がることになり、結果として航空会社も収益性の拡大を見込めるようになります。(航空会社は貨物重量に応じた収入を得ている)

まとめ

空港で飛行機ウオッチングを楽しまれている航空ファンの皆様におかれては、是非飛行機の貨物室ドアにも注目し、どんな種類のULDが飛行機に積載されているのかご自身の目で確かめてみれば、さらに空港での飛行機ウオッチングの楽しみ方の幅が広がるのではないでしょうか!?

キャセイ航空「B-HNL」の殿堂入り(?)のお話から貨物室への貨物積載にまで記事内容が飛んでしまいましたが、ここで何を言いたかったというと、私自身これまで「B-HNL」のみが他のキャセイ航空保有777-200型機と仕様が異なっていたことを不思議に思っていたものの、その理由が解明したことに喜びを感じているということです。

どんな理由でボーイング777型機の初号機がキャセイ航空にデリバリーされたかまでは不明ですが、他の777型機と初号機は仕様が異なっていることから、初号機はキャセイ航空の望む仕様ではなかったということがわかりますね。
キャセイ航空はお買い得価格に飛びついたのでしょうかね??

参考メディア

 

ボーイング787まるごと解説 (サイエンス・アイ新書)

ボーイング787まるごと解説 (サイエンス・アイ新書)

 
ボーイング747を創った男たち―ワイドボディの奇跡

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