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次期政府専用機が千歳基地に到着した!!
現行のB747-400型機の政府専用機に代わり、新たに導入されるB777-300ER型機の次期政府専用機が政府専用機の運用部隊(正式名称:航空自衛隊 航空支援集団 特別航空輸送隊)のある千歳基地に到着したことは皆さまご承知の通りだと思います。

この新造機はアメリカ・ボーイング社にて建造後、スイス・バーゼル空港に隣接した航空機メンテナンス等を担う「Jet Aviation」社にて約2年間に亘り内装工事が行われ、その後千歳基地に到着しました。
この記事では、次期政府専用機がどのような経緯を辿り千歳基地に到着したのかまでを説明したいと思います。
平成30年8月17日(金)、次期政府専用機が千歳基地に到着しました。今後、所要の整備や運航訓練等を経て、平成31年度から現有の政府専用機に代わって運用を開始する予定です。なお、2機目については、本年12月に到着する予定です。#航空自衛隊 #JASDF #次期政府専用機 pic.twitter.com/eBgMdt82fL
— 防衛省 航空自衛隊 (@JASDF_PAO) 2018年8月21日
現行政府専用機に代わる次期政府専用機の必要性についての検討
ことの発端は平成23年4月27日に自民党・馳浩議員より提出された『政府専用機に関する質問主意書』から始まった
民主党政権時代に、自民党議員である馳浩衆議院議員より提出された『政府専用機に関する質問主意書』(平成二十三年五月十日受領 答弁第一五一号)に対し、時の内閣総理大臣である菅直人より衆議院議長宛に答弁書(内閣衆質一七七第一五一号 平成二十三年五月十日)が提出されました。
(出典:『第177回国会 151 政府専用機に関する質問主意書』(第177回国会 151 政府専用機に関する質問主意書))
『政府専用機に関する質問主意書』の抜粋
二 政府専用機の今後の在り方について
(二)政府専用機の機体整備を委託している日本航空が政府専用機と同型のボーイング七四七- 四〇〇型機を全機退役させる方針を示した。当分の間は整備委託を継続できる見込みだが、数年後には整備を受けられなくなるとされる。現在運行中である政府専用機二機の今後の取り扱いについてどのような見解か示されたい。
『政府専用機に関する質問主意書』に対する内閣総理大臣の答弁書の抜粋
お尋ねについては、関係行政機関から構成される政府専用機検討委員会において、現行政府専用機の今後の整備の確保の在り方など、様々な選択肢を比較しつつ、現在幅広く検討しているところである。
これら質問主意書及び答弁書より、日本航空のB747-400型機の退役が次期政府専用機検討の一端となっていることもわかります。
新たな政府専用機の機種決定について
平成26年(2014年)8月12日に「政府専用機検討委員会」より平成26年度予算に計上している新たな政府専用機について、政府専用機検討委員会において機種が決定された旨発表されました。
1 提案者及び提案機種
ANAホールディングス株式会社提案のB777-300ER
※機種の主要諸元は別紙のとおり2 決定理由
ANAホールディングス株式会社提案のB777-300ER
は、新たな政府専用機として必要な要求事項を全て満足しており、
機体の性能、機内の仕様、後方支援、教育訓練、納期、経費等につ
いて評価を行ったところ、最も高い評価となった。(機種選定作業の経緯)
- 平成25年 8月 7日 政府専用機検討委員会の「政府専用機に関する対応方針について」において後継機の調達と条件を決定
- 平成26年 4月25日 提案希望会社に対して提案要求書手交
- 6月24日 提案者より提案書を受領
- 8月12日 政府専用機検討委員会において機種決定
(出典:『新たな政府専用機の機種決定について』(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2014/08/12b.pdf))
後述する次期政府専用機の調達にあたり防衛省が策定した事業概要には「委託会社による新たな政府専用機の運航要員の教育、委託会社による新たな政府専用機の維持整備及び委託会社によるフライトシミュレータの保守を行うもの」と記載されています。
機種は航空会社が提案することになっていたようで、日本航空と全日空の両社ともにB777-300ER型機を提案しましたが、決め手は保守等に係る費用だったのではないでしょうか。
また本決定は自民党政権下で行われたものであり、民主党と近い日本航空ではなく全日空の提案が採用されたことに、少なからず政治の臭いがするような気がします。
防衛省が策定した次期政府専用機調達に係る事業計画書
事業の目的
「政府専用機に関する対応方針について」(平成25年8月7日政府専用機検討委員会決定)を受け、新たな政府専用機2機を取得し、現行政府専用機(B-747)の委託整備の見込みが立たなくなる平成31年度以降においても、引き続き要人空輸等の任務を継続する。
(出典:防衛省『行政事業レビューシート』)
事業概要
平成31年度から新たな政府専用機を運航を開始するために、機体(グリーン機:民間航空会社が受領する形態)2機、フライトシミュレータ及び新たな政府専用機の維持・整備部品等の取得ならびにグリーン機に対するVIP改修、委託会社による新たな政府専用機の運航要員の教育、委託会社による新たな政府専用機の維持整備及び委託会社によるフライトシミュレータの保守を行うもの。
(出典:防衛省『行政事業レビューシート』)
次期政府専用機のデザインの決定
次期政府専用機の外装デザインは平成27年(2015年)4月28日に政府専用機検討委員会より決定事項として発表されました。
発表内容の詳細については以下URLをご参照下さい。
次期政府専用機の納入には大手総合商社が関わっている
次期政府専用機の納入は伊藤忠商事が担当
次期政府専用機はB777-300ER型機となり、ボーイング社が建造する機体です。
購入にあたっては日本国政府(防衛省)とボーイング社が直接購入契約を行うものと思っていましたが、よくよく調査すると大手総合商社である伊藤忠商事が大きく関わっているようで、伊藤忠商事の子会社で航空機等を扱う伊藤忠アビエーションのHPによると次期政府専用機の納入を担当していると記載されています。
また、現行政府専用機の購入に関する当時の衆議院答弁書によると、防衛庁(現:防衛省)と伊藤忠商事の間で売買契約が結ばれ、ボーイング社との交渉は政府専用機の売買先である伊藤忠商事が行っていたことがわかります。
つまり、次期政府専用機の売買についても、「政府 ←(売買契約)→ 伊藤忠商事 ←(売買契約)→ ボーイング社」の構図にて契約がおこなわれたものと推測できます。
現行政府専用機の契約内容について
では、寄り道となってしましますが、政府より発表されている衆議院答弁書をもとに現行政府専用機の購入契約について記します。ここでは、防衛庁は現行政府専用機を2機取得するにあたり、伊藤忠商事に対し売買契約にて約360億円を支払ったことがわかります。
(出典:『第114回国会 20 政府調達の政府専用機購入に関する質問主意書』(第114回国会 20 政府調達の政府専用機購入に関する質問主意書))
- 契約件名:政府専用航空機売買契約
- 契約締結年月日:昭和六十二年十二月十八日(1987年12月18日)
- 契約者(甲):支出負担行為担当官 防衛庁調達実施本部長
- 契約者(乙):伊藤忠商事株式会社代表取締役社長
- 契約金額:三百五十九億六千二百万円
- 支払方法:前金払及び納入後の支払
- 納期:平成三年九月三十日(1991年9月30日)
- 契約書の言語:邦文(日本語)
- 購入機種及び機数:ボーイング社製747―400二機
- 政府専用機の売買契約における支払通貨:円
- 政府専用機の製造会社(ボーイング社)との交渉:政府専用機の売買契約の相手方である伊藤忠商事株式会社が行っている。
- 代理店(伊藤忠商事)の役割:政府専用機に関するボーイング社の代理店である伊藤忠商事株式会社は、政府専用機の売買契約における当事者であり、当該契約の履行に関する責務を負っている。
ボーイング社にはプライベート機を専門とする部門がある
ボーイング社には民間航空会社に納入する航空機とは別にプライベートジェット機等を専門に扱う「Boeing Business Jets(BBJ)」というブランドがあります。
次期政府専用機の調達において、2014年6月にBBJは契約相手先を伏せながらもB777-300ER型機の発注があったことを発表しています。恐らく次期政府専用機の契約が伊藤忠商事との間で成立したことを述べているのではないでしょうか。
- https://www.boeing.com/commercial/bbj/
- Boeing Business Jets Finalizes Order for BBJ 777-300ER Airplane - Jun 10, 2014

次期政府専用機の内装工事はスイス・バーゼル空港所在の企業で行われた
約2年間に亘っておこなわれる政府専用機のVIP仕様内装工事
アメリカ・ボーイング社の工場で建造された次期政府専用機の1機目(機体登録番号:N509BJ)は、2016年10月12日にVIP仕様の内装工事の為、ボーイング社と提携しているスイス・バーゼル空港に隣接している「Jet Aviation社」へ飛行しました。
1機目が千歳基地に到着する2018年8月17日までの約2年間に亘って、Jet Aviation社にて内装工事が行われていたことがわかります。
Jet Avation社の親会社であるGeneral Dynamics社のプレスリリースでは、アジアの政府顧客よりボーイング社が受注した2機のBBJ777-300ER型機の内1機がインテリア工事の為到着した旨発表されています。
VIP仕様の航空機内はどんなものになるのか!?
次期政府専用機の内装工事を手掛けるJet Aviations社は航空機製造メーカー等の依頼に応じVIP仕様の航空機内工事を手掛ける企業です。
VIP仕様の航空機ともなると、私ども一般人が想像もできないレベルのインテリアとなってしまいます。スケジュール通り飛んでいる旅客機のファーストクラスでさえもチンケに思えてきます。

以下はB737型機をベースとするBoeing Business Jets(BBJ)のVIP仕様内装のヴァーチャルツアーです。一度試してみて下さい。こりゃもう、旅客機のファーストクラスでさえも三等客室レベルですね。
次期政府専用機は決してこんな派手にはならないはずですが、天皇陛下もご使用される航空機ですので、相当の気品さが漂う内装となっているのでしょうね。
次期政府専用機の機体登録番号
千歳基地に初到着した際の機体は未だ米国籍(所有者:ボーイング社)
次期政府専用機は2機導入される予定ですが、ボーイング社にて建造後に機体登録番号「N509BJ」が1機目に、「N511BJ」が2機目に付与されました。
「N」ではじまる機体登録番号の通り、米国籍の機体ということがわかります。また、所有者はボーイング社であることがアメリカ連邦航空局(FAA)のデータベースより判ります。
1機目が千歳基地に到着した際、「N509BJ」が機体にペイントされていた為、千歳基地への到着時点では未だ米国籍に機体、つまり、日本側の受領場所は千歳基地となっていて正式に日本側に引き渡される前だったのでしょう。

千歳基地に到着した数日後には日本国籍(自衛隊)となった
なお、1機目は千歳基地に到着してから数日後に機体登録番号が「80-1111」に変更されました。これでようやく自衛隊機の仲間入りを果たしました。
2機目は2018年12月に到着する予定で、現行政府専用機に代わって次期政府専用機の導入は2019年度になると言われています。
日本の空からまた2機のジャンボが消えてしまうのが寂しいですが、次期政府専用機も現行機に負けないくらい世界中で活躍して貰いたいですね。
突然出てきた、新政府専用機。レジ番号80-1111でした。 pic.twitter.com/28PQIeUwXD
— ねこむすめ (@nekopyon_nurse) 2018年8月20日