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羽田空港の付近を船舶が航行すると離着陸が制限されてしまう

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羽田空港には北東~南西方向に敷かれた滑走路が2本あります。

  • B滑走路(RWY04 / RWY22)
  • D滑走路(RWY05 / RWY23)

これらの滑走路の延長線上北東側には「東京西航路」(Tokyo West Passage Route)と呼ばれる船舶が航行する通行帯が設置されています。

この東京西航路を船舶が航行する際、羽田空港を離発着する航空機の運航が制限されることになります。具体的な制限について解説したいと思います。

羽田空港 by 新聞通信調査会
Photo : 羽田空港 by 新聞通信調査会

1. B滑走路(RWY04 / RWY22)における離発着制限

B滑走路(RWY04 / RWY22)
図1:B滑走路(RWY04 / RWY22)

aa. 船舶が東京西航路を航行する場合の離発着制限

上記図1はB滑走路を上から見たレイアウトですが、滑走路先端延長上にある東京西航路の「C」と「D」の間の区間を船舶が航行される際、航空機は以下の制限が掛かってしまいます。

【制限が掛かる前提条件】

  • 東京西航路の満潮時潮位において船舶の高さが56.3m以上の場合
  • 東京西航路の範囲:RWY22の端から1,905m~2,555mの間の650mの幅

(注:満潮時潮位:満潮時でこれより高くならないと想定される潮位のこと。Nearly Hightest High Water  Level;N.H.H.W.L)

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【離発着制限】

  • RWY04からの離陸は許可されない。
  • RWY22への到着機に対して空中待機(Holding)または着陸復行(Go-around)が指示されることがある。

bb. 船舶が側傍海域を航行する場合の離発着陸制限

上記図1はB滑走路を上から見たレイアウトですが、滑走路進入灯東側先端箇所から東京西航路の西側区間を船舶が航行される際、航空機は以下の制限が掛かってしまいます。

【制限が掛かる前提条件】

  • 東京西航路の満潮時潮位において船舶の高さが24.0m以上の場合
  • 側傍海域の範囲:滑走路進入灯の端から東京西航路の西端の間の1,065mの幅

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【離発着制限】

  • RWY04からの離陸は許可されない。
  • RWY22への到着機に対して着陸復行(Go-around)が指示されることがある。

2. D滑走路(RWY05 / RWY23)における離発着制限

D滑走路(RWY05 / RWY23)
図2:D滑走路(RWY05 / RWY23)

aa. 船舶が東京西航路を航行する場合の離発着陸制限

上記図2はD滑走路を上から見たレイアウトですが、滑走路先端延長上にある東京西航路の「A」と「B」の間の区間を船舶が航行される際、航空機は以下の制限が掛かってしまいます。

【制限が掛かる前提条件】

  • 東京西航路の満潮時潮位において船舶の高さが53.7m以上の場合
  • 東京西航路の範囲:RWY23の端から1,627m~2,227mの間の600mの幅

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【離発着制限】

  • RWY05からの離陸は許可されない。
  • RWY23への到着機に対して空中待機(Holding)または着陸復行(Go-around)が指示されることがある。

bb. 船舶が側傍海域を航行する場合の離発着陸制限

上記図2はD滑走路を上から見たレイアウトですが、滑走路進入灯東側先端箇所から東京西航路の西側区間を船舶が航行される際、航空機は以下の制限が掛かってしまいます。

【制限が掛かる前提条件】

  • 東京西航路の満潮時潮位において船舶の高さが28.4m以上の場合
  • 側傍海域の範囲:滑走路進入灯の端から東京西航路の西端の間の817mの幅

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【離発着制限】

  • RWY05からの離陸は許可されない。
  • RWY23への到着機に対して着陸復行(Go-around)が指示されることがある。

cc. 側傍海域の航行を防止するための海上保安庁からの要請

側傍海域に高さ28.4m以上の船舶が侵入し航空機の運航を妨げるのを防止するため、海上保安庁より航行方法についての周知がなされています。

  • 水面上の高さが28.4m以上の船舶は側傍海域に侵入しないこと。
  • 水面上の高さが28.4m未満の船舶が側傍海域を航行するときは「東京国際空港D滑走路東方灯標」の北東側を航行すること。

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3. まとめ

かつて、D滑走路のRWY25を使用して離陸する予定の航空機が、滑走路延長上に停泊している船舶がいるという理由で、航空機の滑走距離を短くして離陸するために貨物のACLを下げられた経験があるのですが、離陸ができなかったわけではないので、航空会社の独自規程なのかもしれませんが、船舶を理由に有償貨物を少なくしなければならないほどに船舶は航空機に影響を及ぼします。

今回の記事で船舶の航行が影響して羽田空港を離発着する航空機の運航に制限が掛かるという面白い運用方法を理解することができたと思います。航空機に制限が掛かってしまうのも、船舶は簡単には向きを変えたり減速したりすることも困難なので、船舶・航空機双方の安全を考慮した運用なのだと思います。ただ、船舶側に優先権が与えられているように感じてしまうのは、もともとは海だった場所を埋め立てて羽田空港を造ったわけなので、船側の既得権益とでもいうのでしょうか?

参考記事

 

東京国際空港 (イカロス・ムック)

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羽田空港で働く (ANAエアポートサービスのすべて)

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