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日本航空B767型機が熊本空港を離陸後にエンジン故障でATBした事案は重大インシデントに認定された
事故の概要
熊本空港を出発し羽田空港に向けて飛行していた日本航空JL632/24MAYの運行機材ボーイング767型機(機体登録番号:JA8980)がエンジントラブルにてATB(Air Turn Back)した事故が世間を賑わせています。
JAL632便の離陸後の引き返しについて
平素よりJALグループをご利用いただきありがとうございます。5月24日のJL632便(熊本発-羽田行)におきまして、熊本空港離陸後左エンジンに不具合が発生し、熊本空港に引き返しました。また、熊本県上益城郡益城町にて、当該エンジンの部品の一部と見られる落下物が発見されました。
到着後の検査において、エンジン後方のタービン部などに損傷があることが確認されたことから、5月24日、国土交通省航空局より、重大インシデントと認定されました。今後、国土交通省運輸安全委員会により原因究明などが行われますが、当社も調査に協力してまいります。お客さまおよび益城町の住民の皆さま、ならびに関係の皆さま方に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。[(1)本件落下物による被害を受けられた方のお問い合わせ窓口]
日本航空九州地区総務部 092-261-5316
(5月27日午前9時から午後5時まで)
(5月28日以降の平日の午前9時から午後5時まで)【日本航空HPより】
現在、国土交通省運輸安全委員会の職員が熊本空港に派遣され原因の究明に向け調査が行われている状況です。

国土交通省・安全運輸委員会により「重大インシデント」に指定された
なお、当事故は国交省により「重大インシデント」に指定されましたが、そのことについては既に以下リンクにて発表されています。
また、今後は詳細な調査結果が発表されることになります。当リンクでは過去に発生した航空に関わる事故・インシデントの調査結果が詳細に報告されていますので、関心のある方は是非検索してみて下さい。
重大インシデントに指定された航空機の概要
- 運航会社:日本航空
- 機体登録番号:JA8980
- 型式:767-346
- 製造メーカー:ボーイング
- 製造番号:28837/673
- 登録:1997年9月(機齢:21年 )
- 機体記号 : JA8980 (日本航空) 徹底ガイド | FlyTeam(フライチーム)
機体登録番号:JA8980は2003年にも航空事故調査を受けていた
国土交通省のHPでは今回の事故機である機体登録番号:JA8980が2003年(平成15年)にも航空事故調査を受けていることが発表されています。
日本航空株式会社所属ボーイング式767-300型JA8980は、平成15年6月7日(土)、同社の定期322便として、福岡空港から関西国際空港へ向けて飛 行するため、福岡空港の滑走路16へ向けて自力地上走行中に、誘導路E-1上で08時27分ごろ、急停止した。同機には、機長ほか運航乗務員2名、客室乗務員6名及び乗客232名計241名
が搭乗していたが、急停止の際、客室乗務員1名が重傷、同3名が軽傷を負った。同機に損傷はなく、火災も発生しなかった。http://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/AA2004-1-JA8980.pdf
当事故は上空で発生したものではなく、タキシング中(誘導路走行中)の事象であり事なきを得ましたが、ひょっとっしたらJA8980はいわくつきの航空機かもしれません、、、。
当該機は今後どうなるのか?
現在当該機(機体登録番号:JA8980)は熊本空港にてAOG(Aircraft On Ground)の状態となっていますが、国交省による調査が終了次第、羽田空港の整備ハンガーに格納されることになるでしょう。
しかし、双発エンジンであるB767型機であるものの、片方のエンジンが使用できない状態となっているため、今の状態では羽田空港に引き戻すことができません。
そこで考えられる対応方法は以下の2パターンです。
パターン① 熊本空港へ代替エンジンを空輸する
B767型機のエンジンを空輸するとなると、貨物専用機による輸送が必要になってきます。
かつて熊本空港ではかつてB747型機にて運航されていたこともあり、またかつて日本航空は貨物専用機を保有していたこともあることから、その当時であればエンジンを空輸していたかもしれません。
しかしながら、自社貨物専用機を保有していない現在においては、莫大な費用を掛けて他社機をチャーターすることは考えにくいでしょう。
パターン② 熊本空港へ代替エンジンを陸送する
陸送が可能な東京・熊本間なので、現実的なのはこの方法ではないでしょうか。
日本航空にはグループ会社に「JAL AIRTECH」があり、航空機エンジンの陸送も手掛けています。陸送するにあたり、積載貨物(エンジン)の大きさから道路使用許可の承認が必要と思われますが、グループ企業内で輸送が完結するのであれば、陸送される可能性が大きいですね。

ちなみに、ユニークな航空機エンジン輸送方法として、B747型機の2番エンジン(左・内側)と胴体の間に輸送エンジンを装着し輸送することもできます。当たり前ですが、輸送されているエンジンはエンジンとしての機能を果たしていません。ただくっ付いているだけなのです。

まとめ
JL632便にて人的被害が発生しなかったのは不幸中の幸いです。日本航空では2017年9月5日にもJFK向け航空機にてエンジントラブルを発生させています。航空機はAOGのままでは一切の収益を生まずコストを垂れ流すのみであるものの、日本航空は当該機での運航を焦らず、今回の重大インシデントの原因究明を確実に行って旅客が安心して搭乗できるよう安全確保を徹底させて貰いたいです。