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2020年春の羽田空港では離発着それぞれ約50回/日も増加する
2020年に東京で開催されるオリンピック、パラリンピックに向けて羽田空港の深夜・早朝時間帯以外のいわゆる昼間時間帯の発着枠が2020年サマーダイヤより年間39,000回(出発+到着)も拡大することになります。
つまり、現在約60,000回の発着枠が2020年サマーダイヤを機に一気に1.7倍の約99,000回に拡大するのです。
羽田空港の発着時間帯
- 昼間時間帯:0600~2300
- 深夜早朝時間帯:2300~0600
国際線スケジュールの期間
- サマーダイヤ
3月の最終日曜日から10月の最終日曜日の直前の土曜日までの7か月間 - ウインターダイヤ
10月の最終日曜日から翌年3月の最終日曜日の直前の土曜日までの5か月間

年間39,000回もの発着が増えるということにピンとこないかもしれませんが、単純計算すると「39,000回÷2=19,500回」の出発と到着がそれぞれ増加します。
さらに細かくいうと、「19,500回÷365日≒54回/日」となり、1日あたり54回の出発と到着がそれぞれ増加することになります。
前述の通りオリンピック、パラリンピックが始まる直前よりサマーダイヤが開始されるため、世界からの旅行客の増加を見越し、増枠分すべてが国際線に割り当てられるものと考えられます。また、日本と外国の航空会社にはそれぞれ同じ便数が割り当てられるため、以下の配分になると思われま
ただでさえ混雑空港である羽田空港が更に混雑しますね。だからこそ、この交通量を捌くために都心上空を通過する航空路が新たに設定されることになっているのです。
2020年サマーダイヤ増便数(想定)
- 日本の航空会社(出発):27便/日
- 日本の航空会社(到着):27便/日
- 外国の航空会社(出発):27便/日
- 外国の航空会社(到着):27便/日


出典:国土交通省HP「羽田空港のこれから」
羽田空港乗り入れ路線は二国間航空交渉で決まる
さて、2020年の羽田空港の増枠における関心事は、「どの航空会社が運航するのか」「どの路線が割り当てられるのか」ということではないでしょうか?
前述の通り羽田空港の発着処理能力に応じた「枠」が予め設定されているため、その枠内で路線を決定する必要があります。
その「枠」と「路線」を決定するにあたり開催されるのが、日本および外国の航空局との二国間航空交渉(航空当局間協議)です。
例えば、羽田空港の乗り入れ枠を希望する国の航空当局と国土交通省航空局が協議し、日本の国益を見据え配分を決めます。
航空交渉の結果については国土交通省ホームページにて公開されるので、誰でも確認することが出来ます。(以下リンクには過去の日米航空交渉の結果が掲載されています)
なお、「枠」の確保はいわば権益となります。しかしながら権益のうえに胡坐をかいて枠を確保したものの運航しない航空会社を排除するために、"U/Lルール"というものが国際的なルールとして航空業界に存在します。
"U/Lルール"とは「Use it or Lose it Rule」の略であり、これは、サマースケジュールもしくはウインタースケジュール間においての運航実績を80%確保しないと翌年同期には枠を喪失してしまうルールです。
例えば出発で1枠ある航空会社がサマースケジュールの約210日間中、80%である168回を下回る運航実績となった場合、翌サマースケジュールでの運航権利を失ってしまいます。
このルールは"Historic Rights"という先例優先の原則に基づくもので、サマースケジュールもしくはウインタースケジュールに運航予定便数の80%以上を運航した場合、翌年の同期に運航をリクエストすれば優先的に同じ枠が確保され、航空会社は安定的・継続的なダイヤの設定が出来るようになっています。
したがって航空会社は「枠」を取得したものの旅客数が伸び悩むという理由で運休を長く続けると翌年同期の「枠」を失うことになるので、赤字であったとしても80%以上の運航実績を確保するために飛行機を運航することがあります。
もしある航空会社が枠を失えば、同じ国の航空会社がハイエナのようにその枠を狙ってきます。
羽田空港の発着時間は世界会議で決まる
羽田空港への乗り入れ「枠」を確保したとしても、いつの時間に運航したいかは各航空会社の営業戦略と直接結び付くため、航空会社にとってはとても重要関心事となります。
「枠」を確保できたとしても、希望通りの時間帯に運航できなければ旅客を集められず収益を確保できなかったり、飛ばしてナンボの旅客機を空港で長時間寝かせることになり機会損失となります。
世界各国の空港の発着時間の調整は、年に2回開催される世界会議にて決定します。
羽田空港のスポット割り当ては国交省が担当
これまでに「枠」の確保と運航時間調整(発着調整)について説明してきましたが、最後に残るのは空港のスポット割り当てです。
羽田空港国際線ターミナルであれば、イミグレから遠く離れたサテライトまでの徒歩移動は大変ですよね・・・。なるべくイミグレから近い110番ゲート付近であれば最高です。
羽田空港国際線ターミナルにおける旅客機のスポットの割り当てを担当しているのが国土交通省東京航空局東京空港事務所の管制保安部です。
スポット割り当ては原則として1か月に1度更新されています。
なお、各スポットに駐機可能な機種については、別の記事での説明を検討しています。
米国航空会社による羽田空港乗り入れ増枠宣言
米国時間の2019年2月21日(木)、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空、ハワイアン航空の合計4社がアメリカ運輸省(DOT)に対し2020年サマースケジュールからの羽田空港乗り入れ申請を行いました。
アメリカン航空の申請(4枠)
- DFW発(AA227): DEP 1235 / ARR 1555 / Boeing 772
- DFW発(AA597): DEP 1500 / ARR 1830 / Boeing 772
- LAS発(AA776): DEP 1330 / ARR 1725 / Boeing 788
- LAX発(AA171): DEP 0040 / ARR 0445 / Boeing 788
- American Airlines to Apply for Additional Service at Tokyo’s Haneda Airport
- アメリカン航空、東京/羽田〜ダラス・ラスベガス線を開設、ロサンゼルス線増便へ 米運輸省に申請
デルタ航空の申請(6枠)
- SEA発(DL167): DEP 1200 / ARR 1430 + 1 day / Airbus 330-900neo
- DTW発(DL275): DEP 1015 / ARR 1215 + 1 day / Airbus 350-900
- ATL発(DL295): DEP 1100 / ARR 1415 +1 day / Boeing 777-200ER
- PDX発(DL69): DEP 1415 / ARR 1700 + 1 day / Airbus 330-200
- HNL発(DL577): DEP 1130 / ARR 1530 + 1 day / Boeing 767-300ER
- HNL発(DL181): DEP 13:00 / ARR 17:00 + 1 day / Boeing 767-300ER
- Delta proposes flights between Haneda, Tokyo’s city airport, and 5 new U.S. cities
- デルタ航空、東京/羽田〜シアトル・デトロイト・アトランタ・ポートランド・ホノルル線を開設へ 米運輸省に申請
ユナイテッド航空の申請(6枠)
- EWR発(UA131): DEP 1100 / ARR 1340 + 1 day / Boeing 777-200
- ORD発(UA881): DEP 1245 / ARR 1555 + 1 day / Boeing 777-200
- IAD発(UA803): DEP 1240 / ARR 1525 +1 day / Boeing 777-200
- LAX発(UA39): DEP 1140 / ARR 1510 + 1 day / Boeing 787-10
- IAH発(UA7): DEP 1020 / ARR 1400 + 1 day / Boeing 777-200
- GUM発(UA828): DEP 0700 / ARR 0940 + 1 day / Boeing 777-200
- United Applies to Serve Tokyo Haneda from Six Leading U.S. Hubs Where Demand Is Highest
- ユナイテッド航空、東京/羽田〜ニューアーク・ロサンゼルス・シカゴ・ワシントン・ヒューストン・グアム線を開設 米運輸省に申請
ハワイアン航空の申請(3枠)
- HNL発(HA863): DEP 1210 / ARR 1530 + 1 day / TBD
- HNL発(HA867): DEP 1410 / ARR 1730 + 1 day / TBD
- HNL発(HA869): DEP 1510 / ARR 1830 + 1 day / TBD
米国への新規配分枠は12枠となる予定
米国航空会社増加枠が12枠になると国土交通大臣が明言
2019年2月12日に行われた国土交通省 石井大臣の会見にて2020年サマースケジュールにおける新規配分枠が12枠となる旨発言がありました。
(問)日米航空当局が、羽田増枠分のうち、半分程度を日米路線に割り当てる方向で最終調整に入ったと一部報道がありましたが、その状況について教えてください。また、配分交渉にあたって、どのような路線、また、どのような点を重視されるか、現状でのお考えがあれば教えてください。
(答)羽田空港の増枠に関しましては、できるだけ多くの方々から理解を得られるよう、引き続き丁寧な情報提供を行っております。
一方で、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの増便を目指す上で必要なスケジュールを勘案し、その準備行為の一環として米国との意見交換を行っており、先般、発着枠数が増枠した場合に、米国へ配分されるべき発着枠数につきましては、12枠とする共通認識を持つに至りました。
なお、これを受けまして、米国航空当局におきまして、米国時間の7日から、米国当局の判断において、米国航空会社への国内配分手続きに着手したとの報告を受けております。
米国運輸省(DOT)が米国各航空会社に「枠」を配分
2月12日の国土交通省 石井大臣の会見にて2020年サマースケジュールからの増枠時における配分に関し12枠(出発・到着がそれぞれ12回/日)になる旨の発言がありました。
一方で米国航空会社の4社(AA・DL・UA・HA)が米国運輸省(DOT)に対し申請した路線の合計は19枠(AA:4枠、DL:6枠、UA:6枠、HA:3枠)となっています。
つまり、対米国12枠に対し19枠の申請があり7枠分が超過していることになります。
したがい、今後DOTは米国にとっての公益の最大化が達成できる各航空会社のパフォーマンス等を鑑みたうえで12枠に収まるよう各航空会社への枠の割り当てを決定していくことになるでしょう。
なお、以下リンクより「APPLICATION OF AMERICAN AIRLINES, INC.」に繋がるのですが、これは羽田空港のJFK線より撤退したアメリカン航空が再就航しLAX線を実現するにあたりDOTに対し提出した申請書(Application)の実物です。
当時デルタ航空は羽田空港に2路線(枠)を持っていたものの、シアトル線の運行実績が思わしくなく、そのことを申請書内で咎めています。アメリカの航空会社にとっても羽田路線はドル箱なのでしょう。ライバルを蹴落とし、獲得に向けた強気の姿勢が申請書にもよく表れているところがアメリカらしいです。
まとめ
2020年サマーダイヤより羽田空港の発着回数が大幅増加
2020年サマーダイヤ(3月末)より羽田空港の昼間時間帯の発着回数が年間39,000回も増加し年間99,000回の発着となる。
39,000回の発着増加により1日あたり54回の出発と到着がそれぞれ増加することになる。
発着回数の増加により着陸時に都心上空を通過する新たな飛行経路を設定し羽田空港の滑走路の稼働率を上げ効率よく運用する。
新規国際線の就航までの流れ
step
1国土交通省航空局は二国間航空交渉により各国に羽田空港発着の「枠」を配分する。
step
2年に2回開催される世界会議にて羽田空港発着の時間を決定する。
step
3国土交通省東京航空局は羽田空港国際線ターミナルのスポットを割り当てる。
羽田空港増枠時、米国には新たに12枠を割り当てる
ドル箱路線の羽田線は米国航空会社も路線を就航させたくてたまらないようです。原理原則として成田空港の路線を確保したうえで羽田空港に新規就航を許すといった暗黙の了解があったものの、今やその建前も崩壊し、羽田空港増枠により米国航空会社は成田空港から羽田空港に路線を移管させるとも発言しています。やはり都心まで直ぐそばにあり、交通の便も良い羽田は魅力的です。
なお、国土交通大臣が明言した米国12枠の配分に対し、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空、ハワイアン航空の4社が2019年2月21日(米国時間)、米国運輸省(DOT)に対し申請した路線は合計19枠でした。
つまり7枠分が超過していることになりますが、今後DOTが米国の公益が最大化される路線を見極め、最終的な路線(枠)が決まることになります。
おまけ(東京オリンピックとブルーインパルス)
東京オリンピック公式HPでは「ブルーインパルス」にまつわる記事が掲載されています。
続編:2020年の羽田空港発着枠をめぐる米国航空会社の熾烈な争奪戦(追記:2019年8月20日)
米国路線の枠がアメリカ運輸省(DOT)によって正式に決定しました。それに関連する記事を掲載しましたので、以下リンクよりご参照ください。