蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

【台風と航空機】地上駐機中のジャンボさえも動かす強風から航空機を避難させよ

 

安全は全てに優先する

非常に強い勢力を保つ台風21号が9月4日(火)には日本列島に接近し上陸することが確実視されています。

その影響で航空会社からは既に欠航等の案内が発表されていますが、それは「安全は全てに優先する」ものであり仕方ないことを理解しなければなりません。

そして、航空機は横風(Crosswind)に弱いことも認識しておかなければなりません。滑走路が延びる縦方向に対し横から吹く風のことをCrosswindと呼びます。Crosswind時は航空機は風が吹いてくる方向に機種を向けながら(つまり滑走路に対し横向きで)着陸する必要があり、以下YouTubeでもおわかりの通り航空機が木の葉のように舞うこともあります。決して生きた心地がしませんよね??

なので、強風で欠航等になっても、決して空港のグランドスタッフには詰め寄らないで下さいね。すべては乗客である皆さまの安全の為なのです。

 

台風21号 / JEBI(JTWC)

台風21号 / JEBI(JTWC)

台風21号 / JEBI(JTWC)

台風21号 / JEBI(JTWC)

では、スケジュール便を欠航することになり運航予定のない航空機はそのままハブとなっている空港に駐機させたままにしてしまうのでしょうか?

その疑問に私が調査した範囲内でご説明します。

では、まずは衝撃映像をご覧ください。

200トン近くもあるジャンボ機を持ち上げる風の威力

 

この映像はアメリカ・カリフォルニア州にある、いわゆる航空機の墓場で撮影されたものですが、駐機されていたB747ジャンボ機が強風の力で上下に煽られています。

この時、この駐機場には時速70マイル(時速約112キロメートル)もの強風が吹いていたそうで、翌日には機首が45度傾いていたそうです。

航空機が離陸する時、前方より受ける風の力で上に上がろうとする力が生まれる空気力学を考えると、映像に映っているジャンボ機が上下に煽られてしまうのも納得できるのですが、それと同時に強風時に航空機をそのままの状態にしておくことがどれだけ危険なのかもよく解ると思います。

ちなみに乗員、旅客、燃料も積載していない航空機そのものの重量をEmpty Weight(空虚重量)と言いますが、ジャンボ機のEmpty Weightは約200トン近くになります。

超重量級の物体を動かしてしまうほど、風の力は恐ろしいものがあります。

航空機が駐機する空港に台風が接近した際の対処

では、強風が荒れ吹く台風の真っただ中の状況において、旅客機はどのように対処されるのでしょうか?

対処方法については航空機運航者のSNS等にその答えが以下の通り記載されていました。

  1. 格納庫に避難させる
  2. 風向きに対し機首を正対させその場に留まる
  3. 台風の影響の無い空港まで飛ばし避難させる

これら3つの解決方法がありますが、数百機もの航空機を運航するような航空会社は格納庫が幾らあても足りませんし、また風向きに対して機首を正対させたとしても航空機が動く可能性があるので更に燃料を積載し航空機重量を重くする措置が必要になります。台風が迫ってくる時間との闘いという状況下、航空機一機一機に燃料を積載するには現実的ではありませんね。

ということで、日本の大手航空会社の場合は「台風の影響の無い空港まで飛ばし避難させる」ことが一般的に行われています。

ちなみに日本航空はOCC(Operation Control Center)という旅客機運航の心臓部である部門にて自社旅客機の対処について検討・決定を下します。

例えば、着地空港上空まで飛行しても気象状況次第では出発地空港に引き戻す条件付運航や、通常は夜間オーバーナイトし翌朝運航する旅客機を、台風が通過する間は他空港に避難させることも、このOCCが決定することになります。

アメリカ空軍戦闘機でさえも台風より避難する

なお、旅客機に限らず軍用機も他空港へ避難することがあるのです。

その一例として、台風8号(Maria)の接近に伴ない、沖縄・アメリカ空軍嘉手納基地に所属する18機のF-15イーグル戦闘機及び、アラスカ州空軍基地より嘉手納基地に配備されていた8機のF-22ラプター戦闘機横田基地に避難しました。

嘉手納基地に所属・配備されたこれほども多く(合計26機)の航空機が台風により他基地に避難したのはこれが初めてのことだったようです。なお、台風8号は沖縄では風速130ノット(時速240キロメートル)にも達する猛烈な強風でした。

The F-15s evacuated due to Typhoon Maria.(U.S. Air Force)

The F-15s evacuated due to Typhoon Maria.(U.S. Air Force)

Eight F-22s evacuated from Kadena Air Base, Japan due to Typhoon Maria.(U.S. Air Force)

Eight F-22s evacuated from Kadena Air Base, Japan due to Typhoon Maria.(U.S. Air Force)

まとめ

台風のような強風では地上に駐機している航空機はもちろんのこと、Crosswind時はより難しい着陸となってしまうことがお解り頂けたかと思います。200トン近くの超重量物体であるジャンボ機でさえも浮かせてしまう風の威力を侮ってはいけません。

先に述べました通り、台風などの気象状況に伴いフライトが欠航等になっても決してグランドスタッフに対し怒りをぶつけないで下さい。安全運航の為であり、そしてその決定はグランドスタッフが下したものではありません。そんな時こそ、バタバタしている彼等を労うくらいの心の余裕が紳士淑女には必要です。 

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参考記事・資料