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コックピットでコーヒーをこぼし緊急着陸した航空会社が判明した

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コックピット内でコーヒーをこぼし緊急着陸した航空会社は事故調査機関より明らかにされなかった

機長がコーヒーを通信機器にこぼしコックピット内に煙が発生した

2019年9月13日(金)に興味深いニュースがありました。

操縦士がコーヒーこぼし緊急着陸、ドイツ発メキシコ行き民間機で

[ロンドン 12日 ロイター] - ドイツのフランクフルトからメキシコのカンクンに向かっていた民間航空機が今年2月、パイロットがコックピット(操縦室)の制御盤にコーヒーをこぼしたことにより、アイルランドに緊急着陸を余儀なくされていた。航空事故調査局(AAIB)の報告書で明らかになった。緊急着陸したのはエアバスA330─243型機。運航していた航空会社は明らかにされていない。報告書によると、熱いコーヒーがこぼれた後、制御盤から焦げたような臭いがして煙が出たことから、機長が方向転換を決めたという。負傷者はいなかった。この便には326人が搭乗していた。パイロットはコーヒーカップにふたをせず、カップホルダーでなくトレーの上に置いていた。AAIBはこの問題の発生後、すべての路線の便にカップのふたが提供されることを確実にし、乗員にふたを使うよう呼び掛けているという。

航空会社が明らかにされていないならば自分で調べる

ドイツからメキシコに向かっていた飛行機のコックピット内でパイロットがコーヒーを制御盤(詳細は後述しますが、正しくはACP;Audio Control Panel)にこぼしてしまいアイルランドに緊急着陸した、という内容なのですが、気になる点がひとつだけありました。

それは、航空会社名が明らかにされていないことです。

どうして航空会社名が明らかにされていないのでしょう?不都合なことでもあるの?いち航空ファンとして、どうしても航空会社名が知りたいという血が騒ぎましたので調査することにしました。

なお、上記記事はロイター発でしたので、念のため英語版も確認することにしましょう。

Cockpit coffee spill forces commercial jet to make emergency landing

LONDON (Reuters) - A commercial flight with 326 people on board was forced to make an emergency landing when hot coffee was accidentally spilled over the cockpit control panel over the Atlantic ocean, according to a report on Thursday.  The Airbus A330-243 flying to Cancun, Mexico, from Frankfurt, landed at Shannon in Ireland.  With the hot liquid causing a strong electrical burning smell and smoke rising from the panel, the captain decided to divert, the report from the Air Accidents Investigation Branch (AAIB) said.  The incident happened after a pilot put his coffee cup without a lid on a tray table rather than in a cup holder, the report said.  There were no injuries in the incident, which happened in February.  The AAIB did not identify the airline but said it had since changed procedures to ensure that cup lids are provided for flights on all routes, and that crews are reminded of the need to use them.

日本語版も英語版も記載内容はほぼ同じで、やはり航空会社名はどちらも明らかにされていませんね。

真相(航空会社名)を明らかにするにあたり、記事内に「AAIB」「A330-243」というヒントがありました。AAIBとは、Air Accidents Investigation Branchというイギリスの航空事故調査局のこと、A330-243とはエアバス社が製造する機種名です。

英国航空事故調査局のウェブサイトで事故調査報告書を発見

AIIBのウェブサイトを検索し、さらにA330-243と検索するとあっけなく事故報告書が閲覧できました。

assets.publishing.service.gov.uk
https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5d518014ed915d7646dea425/Airbu...
https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5d518014ed915d7646dea425/Airbus_A330-243_G-TCCF_09-19.pdf

これがロイターの記事内に書かれていたAAIBの報告書ですね。

しかしながら、どういうわけか報告書内にも航空会社名が記載されていません。

通常であれば、事故調査報告書には航空会社が明記されるのが常識だと思うのですが、これはAAIBによる恣意的な意図があるのでしょうかね(笑)?

ですが、ここで引き下がるわけにはいきません。

報告書の中には決定打となるヒントがあったのです。

機体登録番号からわかる航空会社

それは「Registration」。つまり機体登録番号です。

このA330-243型機の機体登録番号は「G-TCCF」です。

G-TCCFをGoogle先生で検索すると、すぐに航空会社が判明してしまいます。

はい、パイロットがコックピット内でコーヒーをこぼして飛行機を緊急着陸させたのは"Thomas Cook Airlines"でした。

事故報告書を読むと具体的な事象が判ります。

機長がこぼしたコーヒーがACP(Audio Control Panel)の隙間に入り込んだ結果、機器が熱を帯び発火したような臭いが発生しコックピット内に煙が立ち込めました。これによりVHF通信機器が故障したようです。

事故調査報告書の最後にも記載がありますが、コーヒーのカップにはしっかりとキャップをして、トレーの上ではなく、カップホルダーに置くことが是正措置のようです。

車でも同じですね。セブンイレブンで購入したホットコーヒーにはしっかりとキャップをして、傾けてもこぼれないように。そして、車が動いてもこぼれないように、しっかりとカップホルダーに置きましょう!!

G-TCCF/A330-243

G-TCCF/A330-243

G-TCCF/A330-243

G-TCCF/A330-243

AIRBUSとBOEINGの機種番号の違いについて

AIRBUSの機種番号

AIRBUS(エアバス)が製造する機種にはA320型機やA380型機などがあります。

また、A330型機の場合、A330-200型機やA330-300型機があります。

AIRBUSでは飛行機の機種番号(モデルナンバー)に、その飛行機を構成するエンジンの種類等が反映される仕組みになっています。

例)A330-243の場合

  • A330:AIRBUSが製造する飛行機の種類
  • 43:飛行機の種類の派生型
  • -23:"Rolls-Royce"製のエンジンを搭載している
  • -24:"Trent772B"という種類のエンジン

つまり

例)A330-243の場合

  • A330:モデル
  • BC:シリーズ
  • -AC:エンジンの製造メーカー
  • -AB:エンジンの種類

を表すことになっています。

ちなみに、エンジンの製造メーカーについては以下をご参照ください。

エンジン製造メーカー

  • 0:General Electric
  • 1:CFM International
  • 2:Pratt & Whitney
  • 3:International Aero Engines(P&W, R-R, MTU, Kawasaki, Mitsubishi, and IHI)
  • 4:Rolls-Royce
  • 5:CFM International( LEAP-1A for A320 NEO Family)
  • 6:Engine Alliance (GE and P&W)
  • 7:Pratt & Whitney(PW1100G for A320 NEO)

以上のように、AIRBUSはハイフンの2桁目、3桁目がエンジン製造メーカーやエンジンの種類を表していることがわかりましたね。

BOEINGの機種番号

BOEING(ボーイング)が製造する機種にはB747型機やB777型機などがあります。

また、B747型機の場合、B747-400型機やB747-800型機などがあります。

BOEINGでは飛行機の機種番号(モデルナンバー)に、その飛行機を発注した航空会社等、つまり顧客番号が反映される仕組みになっています。

例えば、BOEINGのいち顧客である日本航空の番号は「46」となっていて、もし日本航空がB747-800型機を発注したならば、その飛行機の機種番号は「B747-846」となります。

もうひとつの例えとして、日本航空がB777-300型機を発注したならば、その飛行機の機種番号は「B777-346」となります。

したがって、BOEINGが製造する機体は、その飛行機の機種番号を見ればどの航空会社が発注したものかわかるようになっているのです。

ちなみに、B787型機などBOEING製造の飛行機のL1ドア(いちばん前の左側のドア)が収まる箇所の飛行機本体の上部に銀色のプレートが貼り付けられていますが、これには当該機の情報がいろいろ記載されているので、是非搭乗の際はご覧になってみてください。

まとめ

コックピット内でコーヒーをこぼしたことによる緊急着陸事象については、報道では航空会社が明らかにされていませんでしたが、インターネット社会では簡単に調べることができますね。やはり、何でや!?と思ったらならば自ら調査することで更に知識を深められます。

そして、当記事にAIRBUSとBOEINGの機種番号について書いた理由も述べたいと思います。

コーヒー事故記事では、機種番号「A330-243」が記載されていたにもかかわらず、航空会社が明らかにされていませんでした。

実は、私はBOEINGの機種番号のルール、つまり最後の2桁は顧客番号であることを知っていたので、AIRBUSも同じルールで機種番号を付けているのであれば「A330-243」だけで航空会社が判ると直感的に思ったのです。

しかしながら、自分で調べるうちに、AIRBUSの機種番号には顧客番号は含まれていないこと、そして、エンジンに関係する番号が振られることがわかったのです。

今回のこのコーヒー事故を通して、私自身も航空機製造メーカーによって機種番号の付け方が異なることを発見し、自分自身とても勉強になりました。

やはり、疑問をもって、自分で調べることは大切ですね。

参考記事









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