全日本空輸(ANA)が2018年2月1日に『2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略について』を発表しました。
2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略について|プレスリリース|ANAグループ企業情報
この中で5つのコア事業のうち「第3のコア」として位置付けられた貨物事業において「機材構成の見直し(大型フレイター導入)」が盛り込まれました。現在は中型機とされるボーイング767型貨物専用機を運航しているため、大型フレイターの導入により約2倍の搭載重量増加が可能となります。
ANA Cargo:BOEING 767-300 FREIGHTER:機体・BULK仕様|ANA Cargo
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貨物事業「第3のコア」の具体的内容
貨物事業の中の大きな目標は「首都圏・沖縄貨物ハブのネットワーク再構築で成長を加速」させると表明され、2つある中目標のうちのひとつが「首都圏ハブ(成田・羽田):アジア=北米間の需要獲得、大型フレイターの導入」となっています。
その詳細として次のように述べられています。
中長期的に需要拡大が見込まれるアジアと北米間において、航空機エンジン・自動車などの大型貨物や、リチウムバッテリー・医薬品などの危険品・特殊品を大量輸送できる大型フレイターを新たに導入します。拡大する旅客便ネットワークとフレイターの相乗効果により、伸び行く需要を積極的に獲得していきます。
ボーイング777 貨物専用機の導入
ANAによる中期経営戦略の発表後、航空業界情報媒体「Aviation Wire」にて以下の記事が記載されました。(2月23日付)
ボーイング777F貨物機の導入に向けて最終調整を進めていることを明らかにした。2018-22年度の中期経営計画期間中に、新造機を2機導入する。
2014年2月時点では既にボーイング777貨物専用機の導入が計画されていた
なお、「Aviation Wire」によると『2014-16年度 ANAグループ中期経営戦略について』発表時にはボーイング777貨物専用機(777F型機)の導入が候補に挙がっており、今回発表された中期経営戦略でも777F型機の導入が想定されます。
ANA片野坂社長「日本貨物航空への投資はない」(2月23日付記事)
また、Aviation Wireによると、ANAが過去に出資していた日本の貨物専用航空会社である日本貨物航空への投資はない、とのANA片野坂社長のコメントも発表しています。
かつて出資していた日本貨物航空(NCA/KZ)への再出資の可能性について、片野坂社長は「かつてのような投資はない」と否定した。
なお、日本貨物航空は日本の航空会社で唯一ボーイング747型機を運航する航空会社であり、且つ日本で唯一貨物専用機を運航する航空会社です。ちなみに2005年3月31日時点でANAは日本貨物航空の株主であり、船会社である日本郵船と並んで27.59%もの株を保有する筆頭株主でした。
ANA、日本貨物航空との業務提携を2018年度に始める
その後、日本経済新聞(2月25日付記事)では以下内容が発表されました。
日本の航空貨物事業首位の全日本空輸は日本郵船子会社で同2位の日本貨物航空(NCA)と業務提携する。大型貨物専用機を保有するNCAと中型機を持つ全日空が連携し、輸送の効率化を進める。製造業が集中する東アジアは部品のグローバル移動が激しくなっている。日本連合で大韓航空や香港のキャセイパシフィック航空などアジアの貨物大手に対抗する。
(中略)
全日空とNCAは近く覚書を交わし、2018年度に提携を始める。両社が持つ中国・アジアや北米への貨物路線を中心に共同運航(コードシェア)に取り組む。それぞれの貨物便の輸送スペースを効率的に運用するほか、全日空が整備士を派遣して整備作業を迅速化し、NCAの保有する貨物専用機の稼働率を高める。
ANAは777Fを導入しつつも日本貨物航空と提携するのか?
今やANAと日本貨物航空はライバル会社であり、且つANAは次期中期経営戦略でも大型フレイターの導入を盛り込んでいたため、日本貨物航空(NCA)や日本航空(JAL)とのパイ取り合戦に優位に立つための戦略だと思いましたが、ここでNCAと「業務提携」するとは意外でした。
日経新聞は度々誤報ネタもあると聞くので、ANAとNCAの業務提携なんて無かったことにもなりそうですが、動向についてはウオッチしていこうと思います。
まとめ
ANAは現在ボーイング767型機の貨物専用機(767F)を運航し、沖縄・那覇空港をベースに米国・Fedexのようなハブ&スポーク手法を用いて中国、東南アジア等と日本を結ぶ航空貨物輸送システムを導入しています。
しかしながら767F型機では貨物搭載重量が約50トンと、旅客機貨物室に貨物を搭載する場合の約2倍強となっているため、更なる貨物搭載重量の増加を見据えて777F型機の導入に至っています。777F型機の導入により航続距離も増加するため、東南アジア発~那覇空港経由羽田/成田空港までは767F型機、羽田/成田~欧米までは777F型機の運用も可能になるかもしれません。
私の見方としては、貨物専用機を運航するANAは、旅客便のみで貨物輸送するJALをここで一気に引き離す目論見があるのではないでしょうか。ANAは『8.10ペーパー』を基にJALを羽田の離発着枠に制限をかけるよう政府・与党に働きかけてきましたが、その期限も切れJALが自由になったところで潰しにかかっているような気がします。