航空貨物代理店(フォワーダー)や商社、メーカーの国際物流部門に配属されたばかりの新入社員にとってなかなか理解しづらいのが混載AWBとストレートAWBの違いではないでしょうか?
それぞれのAWBの役割が解りやすいように説明したいと思います。

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「AWB」(Air Waybill)とは?
まずはAWB(Air Waybill)とは何ぞや?から説明したいと思います。
AWBとは簡単に言ってしまえばクロネコヤマトやゆうパックの発送伝票と同様の役割を果たす国際航空貨物の送り状のことです。ですので、AWBに記載されている事項も基本的に宅配便発送伝票と同じです。異なるのは英語で記載しなければならない、ということくらいです。決して身構える必要はありません。
ではAWBにはどのような内容が記載されるのか、宅配便と比較しながら基本的な内容を説明します。
- AWB番号 : お問い合わせ番号のようなもの
- SHIPPER : 荷送人の名前、住所
- CONSIGNEE : 荷受人の名前、住所
- 発地空港
- 着地空港
- 便名
- 品名
- 個数
- 重量
- 航空運賃
- 付加料金(燃油サーチャージ、セキュリティチャージ等)
おおよそはこんなものです。宅配便の発送伝票と殆ど同じですよね。なお、国際航空貨物の場合の航空運賃は貨物重量と容積重量のどちから大きい方が運賃適用重量となるので、決定方法の詳細については過去記事をご参照下さい。
「ストレートAWB」とは?
荷送人と航空会社が直接運送契約するAWBのことです。直接契約と言っても基本的には航空会社の取扱代理店となっている航空貨物代理店(フォワーダー)が予約の窓口となり、フォワーダーがAWBを発行します。
SHIPPER及びCONSIGNEEは実際の荷送人と荷受人が記載されます。つまり、SONY JAPANが送り主、SONY USAが荷受人の場合、SHIPPERにはSONY JAPAN、CONSIGNEEにはSONY USAが記載されます。
なお、最初に述べた通りストレートAWBは荷送人と航空会社の直接運送契約となるため、航空機を運航する航空会社の運送範囲は出発空港から到着空港までとなります。
つまり、着地空港に貨物が到着した時点で航空会社より到着通知(Arrival Notice)を受けた荷受人は自ら空港に貨物を受け取りに行き、輸入通関手配も自ら行わななければなりません。とても面倒に思えますね。メリットとしては、混載AWBよりも早く貨物を受け取れるようになることでしょうか。
「混載AWB」とは?
混載AWBには2つのAWBが存在します。
- MAWB(Master AWB)
- HAWB(House AWB)
MAWBは航空貨物代理店(フォワーダー)と航空会社間における運送契約となります。一方でHAWBは荷主とフォワーダー間における運送契約になります。
ではMAWBとHAWBの違いについて説明します。
MAWB(Master AWB)とは
前述の通り運送契約はフォワーダーと航空会社にて結ばれます。従い、MAWB上は以下が記載されることになります。
- AWB番号 : 航空会社が発行するAWB番号(例:131-XXXX XXXX)
- SHIPPER : フォワーダーの名前、住所(例:日本通運 東京支店)
- CONSIGNEE : フォワーダーの名前、住所(例:日本通運 上海支店)
- 発地空港 : 使用する航空会社が運航している空港
- 着地空港 : 使用する航空会社が運航している空港
- 便名
- 品名 : Consolidation
- 個数 : 全HAWBの個数の合計
- 重量 : 全HAWBの重量の合計
- 航空運賃
- 付加料金(燃油サーチャージ、セキュリティチャージ等)
フォワーダーは正式名「貨物利用運送事業者」とも言われます。これはフォワーダーは自ら航空機を所有し貨物を運送するのではなく、航空会社が運航する航空機のスペースを利用して貨物を運送する為です。従って発地航空と着地空港は利用する航空会社が運航する路線となるのです。
またMAWBはHAWBが子AWBと見なした場合の親AWBのことを言います。単一HAWBもしくは複数HAWBを一つにまとめた親がMAWBなのです。
「HAWB」(House AWB)とは?
運送契約はフォワーダーと荷主企業にて結ばれます。従い、HAWB上は以下が記載されることになります。
- AWB番号 : フォワーダーが発行するAWB番号(例:NEC-XXXX XXXX)
- SHIPPER : 荷主企業の名前、住所(例:SONY JAPAN)
- CONSIGNEE : 荷受企業の名前、住所(例:SONY USA)
- 発地(空港) : フォワーダーの拠点のある都市名
- 着地(空港) : フォワーダーの拠点のある都市名
- 便名
- 品名 : 実際の品名
- 個数
- 重量
- 航空運賃
- 付加料金(燃油サーチャージ、セキュリティチャージ等)
HAWBの路線はフォワーダーの拠点のある都市を発地、着地に指定することができます。空路は航空会社が輸送しますが、MAWB上の発地・着地からの陸送はフォワーダーが行います。
【例】
<MAWB>
- 発地空港 : 羽田
- 着地空港 : サンフランシスコ
<HAWB>
- 発地 : 新潟
- 着地 : ロサンゼルス
このような場合、
- 新潟→羽田 : フォワーダーが陸送
- 羽田→サンフランシスコ : 航空会社が空輸
- サンフランシスコ→ロサンゼルス : フォワーダーが陸送
となります。羽田→サンフランシスコの輸送は航空会社が担っていますが、HAWB上の契約ではフォワーダーが輸送していることになります。
またフォワーダーが提供する混載を利用することで荷主企業からの集荷や荷受企業への配達も含めてフォワーダーが担ってくれることになります。また、国内のフォワーダーは通関業者も兼ねている為、税関への輸出申告や輸入申告も含め、物流のトータルケアを荷主企業に提供することが可能です。荷主企業はフォワーダーにお任せさえすればコスト(時間は掛かるが安価)や納期(高額だがスピード重視)に応じたサービスを提案してくれるので、国際物流は物流のプロであるフォワーダーにお任せすることをおススメします。
フォワーダーが貨物を輸送するだけで利益を生むカラクリ
フォワーダーは「混載差益」にて利益を得る商売をしています。混載差益とはどういうことか簡単に説明したいと思います。
- 航空運賃は重量が大きくなるにつれて単価が低くなる仕組み(重量逓減制)
これこそが混載差益のキーポイントです。感が良い方はピン!くるかもしれませんが、フォワーダーはHAWB重量に応じた航空運賃を荷主企業より徴収し、複数のHAWBをひとつのMAWBに一括することで大きな重量とし、航空会社に対してはMAWB重量を支払います。
【図:重量逓減制の例】
- HAWB① 貨物重量150kg : 500円/kg ⇒ 航空運賃 75,000円
- HAWB② 貨物重量90kg : 800円/kg ⇒ 航空運賃 72,000円
- HAWB③ 貨物重量350kg : 300円/kg ⇒ 航空運賃 105,000円
従ってフォワーダーがHAWB①、②、③それぞれの荷主企業に対し請求する航空運賃合計は252,000円であるものの、フォワーダーが航空会社に支払う航空運賃は590kg x 100円/kg=59,000円となります。重量逓減制を活用することでフォワーダーが約20万円もの利益を生むことができます。これが混載差益です。
まとめ
荷主企業が海外物流を行う際はフォワーダーに物流をお任せしましょう。そうすることでコストや納期に見合うサービスを提供してくれます。フォワーダーは国際物流のコンサルタントでもあります。また最近のトレンドとして多くの大企業はフォワーダーに物流を丸投げし、在庫管理までもお任せしています。従って日系大手のフォワーダーは荷主企業が進出する海外拠点の付近に営業所(物流拠点)を設置します。またフォワーダーは荷主企業の生産ラインが止まらぬよう安定供給を行うべく確実に航空機のスペースを確保しなければなりません。定期便航空機の運行本数は決まっており輸送できる貨物量も決まっているためフォワダー担当者は航空会社担当者と良好な関係を築く必要があります。普段は航空会社はフォワーダーをお客とみなしますが、港湾ストが発生し航空輸送しか輸送手段が無い場合は航空会社担当者はフォワーダーの足許を見ます。ビジネスパートナーとして、フォワーダーは決して航空会社を下に見てはいけません。
参考記事

- 作者: 海事プレス社CARGO編集部
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