今や旅客機においては巡行飛行中のコックピット入ることは不可能になってしまいましたが、過去には良き時代があり、キャビンアテンダントにお願いすれば飛行中のコックピットに招待して頂けることができました。
今、この時代の世界情勢においてコックピットを訪問することなんて考えられません。本当に良き時代でした。ただ、良き時代といっても約20年前までの話です。
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コックピットを訪問した一番の思い出
1998年にアメリカ・ニューヨーク州・ロチェスター(Kodakの本社がある都市)付近の田舎町でいとことホームステイしたのですが、その帰途にANA001便(ワシントンDC-成田線)のB747-400型機のコックピットを訪問しました。
ちょうどその便には日本の国務大臣が搭乗していたようで、当時のセキュリティはどれだけ甘かったのか、逆を言うとどれほどサービス旺盛だったかと感心せざるを得ません。しかし、航空機好きにとってはコックピットほど興奮する場所はありません。その気持ちは今でさえ仕事でコックピットに入る時も変わらずにドキドキしてしまいます。
そして下の画像のように搭乗証明を頂戴しました。
記載事項は、
- 日付
- 便名、出発空港及び到着空港
- 証明書を記載した場所
- 高度
- 速度
- 機長名
- 副機長名
です。
なお、この証明書には機体登録番号が記載されておらず、また当時の私には機体登録番号の概念すら認識していなかったので、どの機体なのかとても気になるところです。写真からも判別できないのが残念。
また、証明書を記載した場所として「N58°03.2」「E177°27.6」と書かれているのですが、具体的な場所を調べてみました。当時としては真っ青な空を飛んでいるとしか印象に残っておらず、飛行場所までは把握していませんでした。
搭乗証明書を記載してくれた「N58°03.2」「E177°27.6」はどこか?
Google Mapで調べてみたところちょうどベーリング海の上空でした。
Flight Radarで現在のNH001便の飛行路を確認したところ、やはりベーリング海上空を飛行していました。ちなみに以下の画像は日本時間12月16日13時現在のNH001便の航跡です。
アメリカ国内線でもコックピットに入った
アメリカ国内線のコックピットに入ったのはアメリカをひとり旅行した2000年です。当時は大阪に住んでおり関西空港よりノースウエスト航空(現デルタ航空)を利用しました。
この時は地上でコックピット訪問となりましたが、左側のキャプテン席にも座ることができ、またパイロット帽も着用させてくれました。私にとってはまさにアメリカン・ドリームでした。
この機体(N548US)の今は?
上の写真はどの路線で撮影したのかさっぱり覚えていませんが、コックピットのパネルに掲示されている番号「5648」をもとにGoogle先生で「northwest airlines 5648」と検索すると機体情報が一発でヒットしました!
- 機体登録番号:N548US
- 型式:757-251
- 製造メーカー:ボーイング
- 製造番号:26495/715
- 登録:1996年8月
- 抹消:2008年10月
- 抹消後状況:ノースウエスト航空(NW)がデルタ航空(DL)に吸収されたため、NW機材としての登録抹消は2008年10月ですが、同時にDL機材として登録されており現在も現役として活躍しています。
なお、当機材はアメリカ国内線で使用されていると思いきや、何と日本にも飛来していて成田・関空・名古屋での目撃記録があります。
機体記号 : N548US (デルタ航空) 徹底ガイド | FlyTeam(フライチーム)
そして当機材は今でもバリバリの現役で毎日アメリカ国内を飛び回っていることがFlight Radarによって確認できました。17年も前に搭乗した航空機が今も現役で活躍しているなんて感慨深いです。
アメリカでも搭乗証明のようなカードを貰った
名刺サイズの厚紙の両面に機体とB757型機の仕様が記載されていて、表面にはパイロットの署名もあります。
どうしてコックピットには立ち入れなくなってしまったのか?
2011年に発生した米国同時多発テロでのハイジャックや、また日本でも1999年に発生したNH61便のハイジャック事件を通じ、保安の観点より旅客によるコックピットの立ち入りが規制されるようになりました。
参考 : 全日空61便ハイジャック事件 - Wikipedia
国家民間航空保安プログラム(NCASP)による保安体制の確立
保安の観点という点であれば航空機のみならず空港内の旅客ターミナルや貨物上屋をはじめ、機内食工場を含めた航空機運航に関わる施設をアメリカ政府(TSA:アメリカ国土安全保障省の外局であるアメリカ合衆国運輸保安庁)によって日本の各空港における監査が毎年実施されています。また国連に加盟する各国政府においてもICAO Annex 17に基づきNCASP(National Civil Aviation Security Program:国家民間航空保安プログラム)を策定しており、日本政府においても同様に定めています。
なお、米国はかつて米国の保安プログラムに基づき日本の各空港を監査していましたが、数年前に日本のNCASPを承認したため、TSA監査では日本版NCASPが確実に履行されているか確認されます。なお、TSA監査で指摘事項が挙がった場合、各航空会社は事象1件につき数万米ドルの罰金が科せられると言われています。
航空法による行政処分
航空法の第30条には「技能証明の取消等」について記載されています。
第三〇条 国土交通大臣は、航空従事者が左の各号の一に該当するときは、その技能証明を取り消し、又は一年以内の期間を定めて航空業務の停止を命ずることができる。
一 この法律又はこの法律に基く処分に違反したとき。
二 航空従事者としての職務を行うに当り、非行又は重大な過失があつたとき。
この条文の第2項により、パイロットはみだりに旅客をコックピットに立ち入らせることができません。
コックピットを舞台にしたスキャンダル
2011年にキャセイ航空のコックピットを舞台にした破廉恥スキャンダルが話題になりました。なんと、コックピット内でのオーラルセックス(口淫、フェラチオ、Blow Job)画像が流出してしまったのです。機長席に座るパイロットがキャセイ航空の赤い制服を着用したCAに行為をさせています。
報道記事によると、このふたりはカップルで、飛行中ではなく地上での行為であったとのこと。
【記事】Cathay Pacific sacks pilot and stewardess over cockpit sex photos(Herald Sun)
日本でも行政処分が下されるパイロットの不祥事が発生している
パイロットの「非行」は海外だけの問題ではなく日本の航空会社にも起こっています。本音と建て前となってしまうかもしれませんが、少しくらい多めに見ては?とも思いますが、コンプライアンス順守が叫ばれる世の中ですので仕方ないのかな。
【記事】相次ぐ乗員のコックピット内撮影、空の安全守れるか(Aviation Wire)
さすが!欧米はサービス精神が旺盛
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が搭乗客に対し地上駐機中のコックピット内での撮影に応じるサービスを行っているようです。
【プレスリリース】SN-APPY LANDINGS WITH NEW BRITISH AIRWAYS PILOT PHOTO APP(British Airways)
同社の搭乗クルーが搭乗前後の顧客サービスを企画するプログラム「Beyond the Flight Deck」の一環。4000名のパイロットが自分専用のiPadアプリ「View From The Flight Deck」を使い、離陸前や着陸後にコックピットを訪れた搭乗者の記念写真を撮影すると、できあがった写真に機長の名前、航路、飛行距離、機体の型式と機体記号が表示される。また、子供が機体の種類を覚えられるように、飛行機の写真も掲載される。写真は搭乗者に自動的に送信されるほか、SNSへの投稿も可能に。BAでは#BAUpCloseというハッシュタグの使用を推奨している。(引用:トラベルボイス様)
このような正式なサービスがあると搭乗客も依頼しやすいですね。BAに搭乗される予定のある方は、是非このサービスに挑戦してみて下さい。そして、近い将来に予想されるパイロット不足に鑑み、このような企画により子供にパイロットいなりたいと夢を持たせることも出来るのではないでしょうか。過密空港である日本では出発前後にこのような時間を持つことは難しく、また保安上の理由からコックピットへの立ち入りは困難だと思いますが、パイロット不足の対処の一環として国にも子供に夢を持たせる取り組みを実現して貰いたいです。
まとめ
過去にはコックピット見学が可能でした。テロリズムに対する保安対策としてコックピットへの立ち入りが規制されてしまうことは仕方がないものの、やはり航空機は夢を与える乗り物であり、そらにコックピットとなると大人でさえも興奮してしまう特別な空間です。
ブリティッシュ・エアウェイズのような斬新な取り組みを通じ子供に夢を与えられるのみならず、この取り組みを通じより多くの旅客が増え企業価値の拡大にもつながるのではないでしょうか。
日本の航空会社においてもCSR活動の一環として格納庫見学(JAL:JAL - JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜/ANA:機体工場見学 | ANAグループ企業情報)を開催し誰でも飛行機を間近に見る機会はあるものの、やはりコックピットは別格ですのでCSR活動よりも更に一歩踏み込み、将来の自社パイロットの獲得に向けコックピット見学のチャンスを作って貰いたいです。
コックピット見学をサービスとして提供しているブリティッシュ・エアウェイズのパイロットはこう言っています。
"パイロットとして私たちは飛ぶことが大好きですし、そのことをみんなと共有したいと思っています。だから搭乗客がコックピットにやって来ることを歓迎しそして私たち自身がそれを楽しんでいます。"