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世界中を動き回る航空機や船に対するサポート体制

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航空機と同様に船も世界中を航行しています。ただ、航空機と船で大きく異なるのは航空機(例えば旅客機)の場合は基本的に2地点間の往復移動ですが、船(例えば貨物船やクルーズ船)は世界中の港をグルっと回ります。では航空機や船が寄港先で物資の補給が必要となる場合、どのように補給するのか説明したいと思います。

説明の前提として航空機及び船に何を補給するのかを決めておきたいと思います。

  • 航空機 : 寄港地で故障したために部品の補給が必要
  • 船 : 航行中の次の寄港地で船員の生活物資や船の部品の補給が必要

寄港地で故障した航空機に部品の補給が必要な場合

例えば日本航空のボーイング777型機が寄港地であるホノルルでエンジントラブルが発生したがために修理を終えるまで日本に戻って来れない状況であるとします。さらにホノルルでの修理部品の調達が困難な場合、日本にある日本航空のメンテナンスセンターより部品を送り届けなければなりません。

この時、欠航回避やノンオペレーションの期間短縮のために緊急で送り届けなければならない航空機の部品のことを「AOG」(エー・オー・ジー;Aircraft On Ground)と呼び、航空機に搭載されるものの中で一番優先順位が高くなります。つまり、航空機重量の都合上、AOG輸送のためには旅客の預け入れ手荷物でさえも出発地で取り降ろされてしまう可能性があります。

AOGはAircraft On Ground(地上の航空機)の略ですが、"飛べない航空機を復帰させるための部品"のことを言います。AOGである部品には、明らかに急ぎと判るようにAOGと記載されたステッカーが貼られます。

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航空機への搭載優先順位

ちなみに、ある航空会社における航空機への搭載優先順位は以下の通りとなっていて、航空機の運行重量に制限が出た場合は優先順位の一番低いものから取り降ろされることになります。

  1. AOG
  2. 旅客
  3. 旅客の預け入れ手荷物
  4. 郵便物
  5. 貨物
  6. 社内品(COMAT)

AOG輸送の例

2016年5月に羽田空港発の大韓航空機が離陸滑走時にエンジンから出火するという事故が発生しました。この機体はその後羽田空港の旧整備地区にある格納庫まで牽引されました。この火災事故で当該機のエンジンを取り替える必要があったため、後日、大韓航空の貨物専用機に代替用のエンジンを積んできました。この際の当該機のことをまさにAOGといい、代替用エンジンもAOGと呼ばれます。

航行中の船が次の寄港地で船員の生活物資や船の部品の補給が必要な場合

さて、旅客機の場合は基本的に2地点間の往復ですが、船、とりわけ貨物船やクルーズ船は世界各国の港を巡ります。長い期間の航海になるので船員の生活用品や船の修理部品等の補給が必要になります。

ではそれら船の航行に必要な物資の補給はどのように行われるのでしょうか。

世界中を航海する船の運航会社である船会社は物資を補給してくれる会社と契約し、その会社が必要物資を調達し船に送り込むことになります。そのような会社のことを船具店といい、物資のことを船用品といいます。

主な船具店のご紹介

各船具店のウエブページに記載されている通り、船の運航に必要とされる様々な物資を取扱い、船に補給していることがわかります。

海外に寄港している船への補給方法

これら船具店は船会社と契約しており、船が海外の港に寄港している時にピンポイントで輸送することになります。ここで何を言いたいかというと、世界中の港をまわる船はひとつの港に長期間留まることはなく、多くても数日なので、寄港地での停船を見計らって補給する必要があるのです。従い、船用品の補給も航空機のAOGと同様、緊急を要する輸送が求められます。

航空機での船用品の輸送

海外の寄港地に停泊している、もしくはこれから寄港地に立ち寄る船宛の船用品は航空機にて貨物として輸送されます。この場合、貨物代理店にて発行される航空会社AWBには以下事項が記載されます。

  • 宛先に船長名(TO THE CAPTAIN OF VESSEL "船名")
  • 到着地の気付として代理店名
  • 品名として「SHIP'S PARTS IN TRANSIT」

ここで注目したいのが品名として記載される「SHIP'S PARTS IN TRANSIT」です。また「IN TRANSIT」とは到着地国にて更に第三国である船向けに積み替えることを意味します。

これがどういうことかというと、船には船籍があるため(例:パナマ船籍)にその船自体が外国になります。つまり、クルーズ船 飛鳥Ⅱ(船籍:日本)がオーストラリアのメルボルンに寄港している場合であっても飛鳥Ⅱは日本(≒日本領土)扱いになります。従い、航空機にて日本より船用品をメルボルン港に停泊している飛鳥Ⅱ宛に輸送した場合、船用品はオーストラリアにて輸入されることなく、保税状態のままで第三国扱いである飛鳥Ⅱまで届けられることになります。

もし「IN TRANSIT」でなければ、到着地国で輸入し必要に応じ関税等も支払い、且つ第三国扱いである船への輸出手続きが必要となり長時間掛かることになります。従い、船が寄港しているピンポイントで船用品を納品するために「IN TRANSIT」が重要な役割を果たします。

航空輸送時に発行されるAWBは基本的にストレートAWB

船用品を航空貨物として輸送する際にはAWBが必要となります。船用品の輸送時に使用されるAWBは基本的にストレートAWB(≠混載AWB)となり空港 to 空港の運送区間が適用されます。そして到着地では現地の船会社の代理店が空港まで船用品を集荷し、船に届けることになります。

混載AWBが発行されることもある

基本的に船用品の輸送ではストレートAWBが使用されますが、航空運賃の支払いが着地払い(=Freight Collect)を受けることができない航空会社や到着地空港があります。その場合、便宜的に1MAWB 1HAWB(Back to Back)扱いとしHAWBを着払い運賃とします。但し、混載AWB扱いが可能なのは、HAWB発行元の貨物代理店の混載仕分け代理店が到着地に存在していることが前提です。

船版のFlight Radarがあるのをご存知でしょうか?

航空機の検索には『Flight Radar』を利用しますが、船の場合は『Marine Traffic』があります。

検索で船名を入力すると、現在の船の位置や出発港、目的港、速度等、Flight Radarで得られる航空機情報と同様の情報が得られます。

また地図中の点(船)をクリックすることで当該船の情報も得られるので、この船はどこからどこに行くのだろうかと楽しめるのではないでしょうか。

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まとめ

世界中を移動する航空機や船が補給物資を必要とする場合、いずれも緊急措置が必要です。航空機の場合はAOGとして、船の場合はIN TRANSIT扱いとなります。たったひとつの航空機や船をピンポイントでしっかりとサポートできる体制になっていますが、そこには多くの人たちが汗水たらして尽力しています。数多くの人たちが一体となり、各業務の持ち分を確実にこなすことで航空機や船の安全運航は確保されます。

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