航空機の運航はパイロットや客室乗務員のみならずとても多くのグランドスタッフの支えによって成立しています。特に旅客機の運行においては定時制の確保、つまりスケジュール通りの出発が絶対条件となります。これは過密空港では航空機のスポット使用時間であったり航空管制が緊密に割り当てられていますし、また到着空港でトランジットを行う乗客も存在するのでオンタイムスケジュールを常に意識しグランドスタッフは業務を遂行しなければなりません。
定時制の確保 < 安全の確保
例えば、欧米線の航空機であっても到着空港での駐機時間は長くて2時間、短ければ1時間半位ですが、その間に機内清掃・燃料補給・貨物等搭降載・機内食入れ替え・整備等を遂行しなければなりません。それゆえ常に時間との戦いになるのですが、航空機の運航は乗客乗員の命に直結するので、決して安全を疎かにすることはできません。先ほど、定時制は絶対条件と言いましたが、それに勝るのは安全の確保です。安全の確保は全てに優先されます。
国が推し進めるヒヤリハット報告制度
しかしながら、常に緊張感をもって仕事をしていたとしても、ふとした瞬間に危ないと感じる事象があったりします。結果的に事故にならなくても、危ない!やヒヤリとした事象を他者とも共有し、安全性を高めていこうとする活動がヒヤリハット報告制度です。国交省もこのヒヤリハット事象の報告制度を推進しており、VOICES(航空安全情報自発報告制度)というサイトにて航空業務に従事する関係者より事象を収集し、国として安全性の向上に努めています。
http://jihatsu.jp/share/docs/InfoPaper0709.pdf
VOICEのホームページでは他者が報告したヒヤリハット事象が掲載され、その事象に対する分析結果も併せて掲載されています。VOICEの運営自体は天下り企業かどうかは判りませんが「公益財団法人航空輸送技術研究センター」(ATEC)が担っています。
公益財団法人航空輸送技術研究センターHP http://atec.or.jp/
このVOICEで興味深いのは、世界各国を飛び回るパイロットからの事象報告が豊富なことで、各国の空港におけるパイロット目線での危険性が良くわかるようになっています。ヒヤリハット事象及びその分析結果については以下リンク内のFEEDBACKに掲載されているので、興味のあるかたは是非参照してみてください。
http://jihatsu.jp/news/docs/RequestPoster2016.pdf
http://jihatsu.jp/news/docs/RequestPoster2017.pdf
ヒヤリハット報告者を評価しボトムアップでの安全取り組み
ヒヤリハット事象は、将来に事故を発生させないためにヒヤリの段階で事象を分析し関係者に共有することで同じようなヒヤリハットを発生させない仕組み作りが必要です。従い、ヒヤリハット事象があることで将来起こりえる事故を事前に潰すことができると考えられるため積極的なヒヤリハット報告が求められます。それを可能にするために、ヒヤリハットが積極的に報告される環境の醸成が必要であり、ヒヤリハット報告者を咎めることは絶対にしてはなりません。むしろヒヤリハット報告を積極的に行う者を評価する仕組みを作らなけらばなりません。
このヒヤリハット報告活動は航空関係に限ったことではありません。どんな企業においても取り組める活動ですので、従業員の能動的な報告活動による企業の安全確保を目指して頂きたいと思います。

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