前回の説明にて便出発60分前までには航務部門にULD重量を通知しなければならず、航務部門はWeight & Balanceのうえ航空機が安全かつ経済的に飛行できるようにULD搭載ポジションを決定するとお伝えしましたが、Weight & Balanceの結果として発行されるものが「Loading Instruction Report(LIR)」です。
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Loading Instruction Report(LIR)は無くてはならないもの
旅客機が駐機しているスポット周りには搭載責任者であるLoad Master(L/M)がいて、L/MはこのLIRを確認しながら指定された貨物室内のULDポジションにULDを搭載します。L/Mの具体的な仕事内容については以下リンクに詳細が載っています。なお、このリンク先の会社のJALグランドサービスは日本航空及びそのカスタマー航空会社のグラウンドハンドリングを一手に引き受けていますので、日本のフラッグキャリアである日本航空を支える腕はピカイチです。
LIRの記載事項について
LIRには便名や航空機登録番号はもちろんのこと、ULD搭載ポジション、ULD番号、ULD重量、ULDカテゴリー(積載されているものの種類。B:手荷物、C:貨物、M:郵便)等が記載されています。例えば下のLIRサンプルには「31P PMC51716XX XXX/C/950 EAT/PER」と記載されていますが、これは「ULDポジション31PにPMC51716XXを搭載する。ULDの中身は貨物(C)でありULD重量は950kg。貨物は食料(EAT:Eat)及び生もの(PER:Perishable)。」と読み解くことができます。
LIRに記載される区画について
LIRには「FWD」「AFT」「CPT 1(Hold 1)」「CPT 2(Hold 2)」「CPT 3(Hold 3)」「CPT 4(Hold 4)」「CPT 5(Hold 5)」と記載されていますが、これは貨物室の区画です。旅客機は前方貨物室と後方貨物室があり、主翼より前の貨物室が前方貨物室、主翼より後方が後方貨物室となっていて、前方貨物室のことを「FWD(Forward Compartment)」、後方貨物室のことを「AFT(After Compartment)」と言います。また、FWDとAFTの中に更に小さな区画で分けられていて、FWDには「Hold 1」「Hold 2」、AFTには「Hold 3」「Hold 4」及びBULKと呼ばれる「Hold 5」にて構成されています。なお、FWDとAFTは燃料タンクにて物理的に隔てられていますが、それぞれのCompartmentは一つの空間となっていてHold毎に壁で仕切られている訳ではありません。なお、旅客機の貨物室は旅客キャビンの下にあり、以下画像のような空間となっています。ちなみに旅客機の場合、旅客キャビンをメインデッキ(Main Deck)、貨物室をローワーデッキ(Lower Deck)もしくはカーゴコンパ―トメント(Cargo Compartment)と言います。
上級旅客の手荷物は最後に搭載し最初に取り降ろす
下のLIRサンプルのULDポジション「42R」の右横にはDOORと記載されていますが、これは後方貨物室のドアとなります。また、ULDの中身はBFとなっていますが、これはFirst Class PassengerのBaggage(ファーストクラス搭乗旅客の手荷物)を意味します。つまり、上級顧客の手荷物が積載されたULDは着地空港に到着しカーゴドアが開くと真っ先に取り降ろされ、このULDだけがターンテーブルへと向かって行くのです。上級顧客はここまで配慮されているということになります。従い、42Rは上級顧客専用に使用される特別なポジションとなります。
貨物室に搭載できるULDの種類と搭載可能数のパターン
例えばB777-300型機の場合、コンテナであれば最大44台搭載でき、またパレットであれば最大14台搭載できます。このようにULDの種類と搭載可能数の組み合わせをコンフィギュレーション(Configuration)と言うのですが、これについては別の機会に改めて説明します。
最後に
旅客機にULDを搭載する際にはLIRを必ず使用します。LIRに記載されたULDポジションにULDを搭載することで、旅客機は安全そして経済的に飛行できます。つまり、ULDポジションを誤って搭載したり、航務部門に通知するULD重量を誤って報告してしまうと航空機のバランスが崩れ墜落に至ってしまうケースもあります。航空機は図体はでかいですが、とても繊細な乗り物でもあります。また、貨物の航空会社上屋搬入が遅延することで、もしその貨物を積載するULDのポジションが奥まったところに割り当てされた場合、そのULDを搭載し終わるまで、他のULDはスポットでスタンバイしなければなりません。そうなるとフライトは遅延してしまうので、搬入遅延貨物は予約便に搭載しない、といった判断も下されます。