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航空機に重量貨物を搭載する際の固縛とその重要性

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まずはこの動画を見て下さい。 

 


Boeing 747-428BCF N949CA crash in Afghanistan shortly after take off

この動画はB747貨物専用機(B747-428BCF/N949CA)の墜落の瞬間を車載カメラで偶然撮影したものです。場所はアフガニスタンにある空港です。当航空機はアメリカ軍によりチャーターされた米国民間航空会社「National Airlines」所有のものであり、アメリカ軍の車両が積載されていました。この空港には給油を目的としたテクニカルランディングにて飛来し、再び目的地に向けて出発した直後の事故です。

航空機が墜落に至った理由

当航空機にはアメリカ軍がイラクやアフガニスタンで使用することを目的に購入した耐地雷の特殊車両「MRAP」(Mine Resistant Ambush Protected)が積載されており、車両1台あたりの重量が12~18トンもありました。当航空機にはこの車両5台に加え、その他の貨物も含め約200トンの貨物が積載されていました。報道によると、車両と航空機はタイダウンストラップ(Tie Down Strap)により固縛されていたものの、離陸時に何らかの理由で固縛不完全な状態となり、車両が後方に移動し航空機がバランスを崩し失速後に墜落に至ったものと考えられています。動画内にも航空機がバランスを失い失速し、ゆらゆらとしているシーンが映っているので、航空機がバランスを失った際の挙動がよくわかると思います。

G-FACTORとは?

旅客機が離陸滑走する際、座席の背もたれに身体が押し付けられる感覚はおわかりになると思いますが、航空機内では常に加速度「G」が発生しています。航空機の種類にもよりますが以下のようにGが発生し、これを「G-FACTOR」と言います。

  • 上方向 3.0G
  • 前方向 1.5G
  • 後方向 1.5G
  • 横方向 1.5G(左右それぞれ)

つまり、航空機が離陸する際、後ろ方向には1.5Gが掛かっており、前述の航空機に積載されていた特殊車両には約27トンもの力が後方に向けて発生していたことになります。

LASHINGとは?

前述にて車両と航空機はタイダウンストップにて固縛されていましたが、航空機に積載する貨物を固縛する際は貨物の実重量ではなく、G-FACTORを考慮した重量に耐えうる本数のタイダウンストップを使用し、決められた場所に確実に必要本数を固縛しなければなりません。今回の事故においては搭載責任者であるLOADMASTERも当然ながら輸送に帯同していましたが、タイダウンが有効に行われず、結果として車両が航空機内で動き、結果バランスを失い失速、墜落に至ったと考えられます。

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固縛用に使用されるべき適切なタイダウンストラップ

貨物固縛用に使用されるタイダウンストラップはIATA(国際航空運送協会)が定めた規則書「IATA ULD REGULATIONS」にて性能基準「TSO C172」を満たすよう要求しています。当基準を満たすストラップにはタグが付けられており、そこには使用有効期限が記載されています。また航空会社独自の規程において使用不可とする損傷基準が明確化されています。 

【参考資料】

最新 航空実用ハンドブック―航空技術/営業用語辞典兼用

最新 航空実用ハンドブック―航空技術/営業用語辞典兼用

 









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