9月5日に羽田空港を出発したJL006便(B777-300ER型機/JA743J)がエンジン故障により羽田空港にダイバート(エア・ターン・バック)した事象はまだ記憶に新しいですが、当便が離陸直後に緊急事態宣言したにもかかわらず悠長に房総半島沖上空をグルグル旋回し、離陸の約1時間後に羽田空港に着陸しました。
どうしてグルグル旋回していたの?と感じた方は少なからず存在している筈で、その理由は報道にもあった通り上空で航空燃料を放棄しているからなのです。
ではどうして燃料を放棄するの?と感じた方も存在する筈ですが、それは航空機が着陸可能となる機体重量(総重量)というものが決められているからなのです。
ではどうして着陸可能な機体重量が決められているの?と感じた方、それは、装置装置といういわゆる航空機の脚となるタイヤ周辺の強度を鑑み設定されています。つまり、着陸可能な機体重量を超過し着陸した場合、最悪、脚が損傷し着陸失敗となってしまう可能性があります。
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最大着陸重量とは?
では、着陸可能な航空機重量について更に深掘りしていきましょう。着陸可能な航空機重量のことを最大着陸重量と言います。
航空機の型式ごとに定められているもので,航空機に許されている着陸重量の最大値であり,着陸装置の強度を決定する上で重要である。航空機メーカーは,その航空機が最大着陸重量で,着陸性能,着陸復行時の上昇性能などの要求条件を満足していることを証明しなければならない。もし離陸後,何らかの理由で緊急に着陸しなければならないときは,燃料を放出して総重量を最大着陸重量以下にしなければならない。747-400の国際線の最大着陸重量は630,000lb(286t)である。
【参照:日本航空 航空実用事典】
燃料投棄に掛かる時間は?
BOEING社が開示しているB777-300ER型機の諸元表によると、当機材の最大着陸重量(Maximum Landing Weight)は251,290kgとなります。そして事故当日のJL006便の離陸時の重量(Take Off Weight)は約334,000kgと想定されるため、約82,710kgもの燃料を投棄しなければならないことになります。
なお、燃料は両翼のノズルより1,400kg/min.の割合で放出される為、約82,710kgの燃料を投棄するのに必要とされる時間は約59分となります。
この数字は離陸してから着陸するまでに掛かった時間と比べると、羽田空港から房総半島沖上空までの往復時間を誤差とした場合、妥当な時間なのではないでしょうか。
【参考資料】