私は外国貨物を扱うことの出来る保税蔵置場を運営する企業にて中間管理職(課長と係長の間の役職)として勤務しています。最近、わが社にて関税法に抵触するような事象が相次いで発生した為、マネジメントレベルが税関に対し陳謝する事態となっています。
私がマネジメントする部署は保税蔵置場に貨物を搬入するする際の受付になるのですが、当部署においても関税法に抵触しかねない事象が発生したため、約20名のスタッフに対しFace to Faceにて面談を行い、保税蔵置場倉主としての社会的責任の大きさについて説明し、ことの重要性を理解させています。
では、どのようなことを説明しているのか、私の備忘録も兼ねて、以下に記したいと思います。
まず、私が所属する部署は前述しました通り外国貨物が保税蔵置場に搬入される際の受付となります。現在、保税蔵置場を運営する企業の殆どがNACCSを通じ外国貨物に係る処理を実施していると思いますが、わが社受付においても搬入処理としてNACCSを使用し搬入登録(BIL)を行います。
さて、上記にて搬入処理としてBILを実施すると言いましたが、なぜBILを実施しなかればならないのかを説明します。
倉主責任としての記帳義務
しかしながら外国との貿易が活発化することで、当然保税蔵置場にも貨物の搬入搬出が多くなるものの、前述のように「貨物の搬出入につき税関への届出及び税関職員の立会いが行われ」ていれば、貿易が滞ってしまうことが明白です。
そこで税関は、保税蔵置場の倉主におかれては自主管理のもと、貨物の搬入から搬出までの間に行われる外国貨物に係る処理を記帳のうえ管理することを倉主への義務としました。これが自主管理制度に基づく記帳義務(関税法第34条の2)です。
外国貨物搬入時の記帳義務
記帳義務に基づき記帳しなければならない項目も定められており、これは関税法施工令第29条の2第1項に記載され、保税蔵置場は蔵置期間中に事実の発生・行為等が行われた場合において以下の通り記帳することになっています。
- 第1号 搬入(蔵置期間中に事実の発生・行為等が行われた場合)
① 貨物の記号、番号、品名、数量
② 搬入年月日
③ 船舶、航空機の名称又は登録記号、入港年月日(当該保税地域等に初めて入れられるとき)
④ 保税運送承認書の番号(保税運送貨物を搬入したとき)
つまり、わが社は航空貨物を扱っているため、NACCS BILによって
① AWB番号、品名、数量
② BIL実施日時
③ 船舶、航空機の名称又は登録記号、入港年月日(当該保税地域等に初めて入れられるとき)
④ 搬出元よりLDRを切られている場合はLDR番号
を記帳していることになります。
なお、搬入時の記帳義務における注意点としては「過不足をクリーン(過不足なし)で記帳 」が挙げられ、例えばLDR上100個で貨物が搬入されることになっているものの、実際に受託(搬入)された貨物個数が30個であるにもかかわらず、受託個数100個としてNACCS BIL(搬入登録)をしてしまう事象があげられます。これは実際には受託していないにもかかわらず税関に対し搬入されたと誤申告していることになり、関税法の非順守となります。
なお、保税蔵置場における記帳義務は第1号の搬入に始まり、第7号の搬出まで存在しますが、ここでは受付における記帳義務を述べていますので、その他については割愛させて頂きます。詳細については名古屋税関HPをご参照願います。
記帳義務の不履行はどうなるのか?
さて、これまで記帳義務において記帳しなければならない事項や非違事象(過不足申告)について述べましたが、では、非違申告したことで一体どうなってしまうの?について説明します。
一言でいってえしまえば、関税法違反となり、保税蔵置場としての運営が出来なくなってしまい、最悪、保税蔵置場の許可取消処分 となります。
もっと簡単に説明するのであれば、自動車免許と同様に行政処分を受けるということです。自動車免許でも違反をすれば罰金や免許停止、さらに免許取消処分が科せられますが、保税蔵置場の倉主に対しても同様に税関(財務省)より処分されます。
では具体的に。関税法非違事象によって点数があり、一定の点数を超えてしまうと(保税蔵置場)「搬入停止」「免許取消」となります。これは即ち、保税蔵置場としての存在意義が消滅し、保税蔵置場の運営を業としている企業にとっては死活問題であり、また経済のグローバル化となった現代においては、貿易そのものが滞り、日本経済のみならず世界経済にも大きな影響を与えてしまうリスクがあります。(関税法第48条 )
まとめ
NACCSによる搬入登録は、たかが7桁のLDR番号を入力し、送信行為(F12キー押下)を行うだけですが、たったこれだけの行為の背景には大きな社会的責任が伴っていることを常に認識していなければなりません。
保税蔵置場の受付担当は若手が起用されることが多いかもしれませんが、彼らひとりひとりの行為が所属企業のみならず経済にも大きな影響を与えることを理解させる必要があります。強い組織の醸成は所属するメンバーが共通目標を持ち同じベクトルで進められるかどうかに掛かっていると思います。
参考資料
【15分で分かるシリーズ】3月の学習ポイント「保税地域」

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