蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

航空会社のコスト低減に貢献する「航空会社事務業務」受託会社の役割とプライド

海外に航空機にて輸出される貨物は貨物ターミナル内にある保税蔵置場に搬入されますが、この貨物ターミナル内では保税蔵置場におけるULD積み付け荷役作業のみならず、航空機の運航にはとても重要な事務作業を行っている部門があります。この事務業務無しでは航空機に貨物を搭載することはできず、また航空機が安全に運航することもできません。それ位重要な役割を担っているのです。この事務業務のことを航空会社事務業務と言うのですが、具体的にはどんなことを行っているのか詳しく説明したいと思います。

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航空会社事務業務とは?

まず、どんな企業が航空会社事務業務を担っているのでしょうか?

"航空会社"事務業務と表されている通り航空会社が行う事務のことなので本来であれば航空会社自身が自社の航空機に貨物を搭載するために実施する事務業務のことなのですが、航空会社のコスト削減、つまり自社保税蔵置場の賃料や社員雇用による固定費を抑えることを目的としてGHA(Grand Handling Agent)を担う企業に当該業務を委託しています。また海外の航空会社もGHAに事務業務を委託することで、1日1便のみの運行であっても容易に参入できるメリットがあります。

例えば、羽田空港の国際線貨物地区にある「東京国際エアカーゴターミナル(TIACT)」はGHAであり、羽田空港が2010年に再国際化されるのを機に国交省PFI事業者を募り、三井物産が民間事業者として選定され、三井物産の資本100%により特別目的会社として設立されました企業です。東京国際エアカーゴターミナルでは羽田空港に就航する多くの海外航空会社の航空会社事務業務を担っています。

また東京国際エアカーゴターミナルでは、海外航空会社のみならず、日本航空JAL)の航空会社事務業務も担っています。つまりJAL羽田空港をハブとする重要拠点であるにもかかわらず、航空会社事務業務を外部に委託していることになります。

なお、航空会社はGHAとの契約においてSLA(Standard Level Agreement)を締結することで自社の要求水準をGHAに履行させることができます。

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航空会社事務業務を担うGHAはどんなことをやっているのか?

前述の通り、GHAは航空会社の代わりに航空会社が本来行うべき業務を担っているので、GHAが担っている業務は航空会社のマニュアルに基づき行われることになります。

では具体的にどんなことをやっているのでしょうか。

1. 航空会社予約部門からの予約情報のを入手

事務担当者は航空会社の貨物予約部門よりフライト毎の貨物予約情報を入手します。一般的に予約情報のことをCBAやFBL(Freight Booking List)と呼びます。

事務担当者はFBLをFAXやEmailにて受信し、その後予約部門担当者と電話にてブリーフィングを行いFBLに基づき使用ULD、貨物室Configuration、特殊貨物有無等の特記事項を確認します。

その後、事務担当者はFBL情報を貨物ハンドリングシステムに登録し、航空貨物をシステムで管理する準備を整えます。

2. 荷役作業者に対する貨物積付指示書の作成

事務担当者は貨物ハンドリングシステムに登録された貨物情報に基づき荷役作業者に対する貨物積付指示書を作成します。

一般的に積付指示書には以下項目が記載されます。

  • グループ名:仕向地毎にULDを分ける場合、グループ名には仕向地が反映されます。
  • ULD台数:一般的に使用するULD台数のことをALLOT(アロット)と言います。
  • AWB番号
  • 仕向地
  • 貨物個数
  • 貨物重量
  • 貨物品名
  • SHC:Special Handling Code;特殊貨物を3文字のアルファベットで表します。(例:生きた動物→AVI、腐りやすいもの→PER、食べもの→EAT)
  • 特殊貨物が積み付けられる場合は使用する資材等

積付指示書が完成したら、作成した積付指示書を荷役作業者に提出しブリーフィングを行い特殊貨物の有無や積付時の注意点等を確認し合います。

なお、航空機によっては同一機種であったとしても航空会社によって貨物室の仕様が異なる場合があります。例えば日本航空B777-300型機は前方貨物室にPALLET ULDを搭載できますが後方貨物室には搭載できません。その結果として一般的にPALLETには大きな貨物を積載することがあるのでPALLET重量も重くなります。そうなることで前方貨物室の重量が後方貨物室に比べ大きくなりWeight & Balanceにてバランスを崩すこともあるのです(バランス・アウト)。

 

 

そのようなことも考慮し、事務担当者は後方貨物室に搭載されるULDに重い貨物を積載する判断を迫られることもあるので、航空機仕様や特性をしっかりと把握しておく必要があります。

3. 積付結果を貨物ハンドリングシステムに登録しマニフェストを作成

荷役作業者によるULDへの貨物積付が終了すると荷役作業者より事務担当者に積付結果が返却されます。それに記載された積付内容を貨物ハンドリングシステムに登録します。なお、今では荷役作業者による貨物積付結果を荷役作業者によるシステム登録(例えば貨物に貼付されたバーコードをスキャン)を行うことで逐一積付結果を把握することができるようにもなっています。

積付結果は以下のように記載されます。

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積付結果にはどの貨物が何個どのULDに積付されたかが記号とULD番号によって把握できるようになっています。

どの貨物が何個どのULDに積付されたかを積付結果に基づき貨物ハンドリングシステムに登録後、マニフェスト(積荷目録)を作成します。ULD単位で、どのULDにどの貨物が何個・何キロ積載されているか反映されたマニフェストのことをULD Manifestと呼びます。このULD Manifest情報は航空機の出発後に電文(FFM;Freight Forwarding Message)にて着地空港や着地税関宛に送信されます。

4. AWB重量とULD計量結果の対査確認(Weight Differ)

積付結果に基づき貨物ハンドリングシステムに登録された重量のことをManifest Weightと呼びます。

また計量されたULDから当該ULDそのものの重量(Tare Weight)を差し引いた重量のことをNet Weightと言い、これはULDに実際に積付された貨物重量のことです。

事務担当者はManifest WeightとNet Weightに相違が無いことを確認しなければなりません。これは航空機の安全運航には欠かせない重量検証であり、ULD計量結果が正しいこと、貨物積み残しが無いことを確認するために実施されます。

もし誤ったULD重量を航務部門に報告してしまったら、、、誤ったULD重量でWeight & Balanceが行われ最悪航空機がバランスを崩し墜落に至ることもあり得ます。だからこそ重量検証には細心の注意が払われる必要があります。

その為、Manifest WeightとNet Weightに相違がある場合には荷役作業者に対しULD再計量を指示することもあります。ULD再計量後も重量に相違がある場合、重量差の要因を徹底的に調べます。

5. 航務部門へのULD重量報告

重量検証にてULD重量が正しいことを確認後、航空機のWeight & Balanceを担当する航空会社の航務部門に対しULD重量を通知します。

なお、ULD重量通知時間は一般的に航空機出発時間の90分~60分前と航空会社との契約にて決まっている為、この時間を超えぬよう事務担当者はULDへの貨物積み付けの進捗管理を行わなければなりません。もしULD重量通知時間が遅れてしまったら、、、航空機の出発時間が遅れることになります。旅客機は絶対に遅延させることができないのです。

6. NOTOCの作成

NOTOCとは「Notofication to pilot in command」を略したもので、危険物や特殊貨物を航空機に搭載する場合において機長に対し提出する書類のことです。この書類は事務担当者にて作成されます。

NOTOCには以下事項が記載されることになっています。

  • 便名
  • 機体登録番号
  • 出発空港
  • NOTOC作成者名
  • NOTOC記載内容確認者名
  • 取り降ろし空港
  • AWB番号
  • 危険物情報(名称、国連分類番号、個数、容量等)
  • 特殊貨物情報(名称、個数、重量)
  • ULD番号
  • ULD搭載場所

NOTOCは必ず機長に提出されなければならない重要な書類であり、航空機の安全運航を担保するものでもあります。

もし上空で貨物室内の火災が発生した場合、機長はNOTOCを確認のうえ、どこに(搭載場所)・どんな危険物が搭載されているか把握し、その危険物に応じた対処をすることになります。火災だからといっても危険物種類によっては対処方法が異なります。機長が正しい判断を行う為の唯一の情報がNOTOCになるので、どれだけ航空機の運航にとって重要な書類なのかお解りになられたと思います。

 

7. 航空機搭載書類の作成

上記「3. 積付結果を貨物ハンドリングシステムに登録しマニフェストを作成」にて作成したULD Manifest及びAWBを航空会社より支給された封筒(エンベロープ)へ収納します。エンベロープへのAWB収納方法は航空会社毎に決まりがあり、最終仕向地毎に分ける場合や全AWBを纏めて収納したりと様々です。

8. エンベロープとNOTOCの搭載

AWBを収納したエンベロープとNOTOC(対象貨物がある場合)を航空機に搭載します。エンベロープの搭載場所も航空会社によって様々であり、貨物室(BULK)や、L1ドアにてチーフパーサーに手交のうえ搭載します。

またNOTOCについては、先ずは搭載責任者の確認(ULD搭載ポジション等)を貰い、その後直接機長に提出し確認署名を受領します。

9. 航空機出発後もまだ続く、、、

航空機の出発後は、税関への報告業務を行ったり、着地に対しメッセージを送信する業務が残っています。全ての作業が終了後、Flight Fileという当該フライトに係る書類を一冊のファイルに閉じ責任者へ提出します。

 

 

これで事務担当者による一機の航空機に貨物を搭載するための一連の作業が終了します。なお、事務担当者は複数のフライトを受け持つこともあり、その場合は各フライトに応じ進捗管理を行う必要がある為、同時に異なる作業を実施したり、状況把握能力が求められます。

まとめ

航空貨物の世界は旅客ターミナルで振る舞うグランドスタッフのように決して華やかではありませんが、航空機の安全運航に携わるプライドを持っています。航空機を安全且つ定時運行させるために豊富な知識と、人を動かしたり進捗管理を確実に行う為の采配能力が必要です。決して表舞台には立てませんが、世界経済を支える国際物流は彼らの尽力によって支えられていると言っても過言ではありません。荷主の皆さま、脆弱梱包はULDへの積載効率が落ちるのみならず、他荷主の貨物にダメージを引き起こす可能性もあります。最悪梱包が崩れ航空機に損傷を及ぼすことも考えられます。安全運航のために航空輸送に耐えられる梱包を確実にお願いしますね。

 

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