蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

旅客機の窓は景色を楽しむためだけにある訳ではない

さて、旅客機の客室には窓がありますが、皆さんその窓を観察したことはありますでしょうか?

きっと視線の先はずっと遠くの景色にある筈ですが、焦点をもっと手前の窓に移してみて下さい。よーく観察してみると窓は3枚で構成されているのがわかると思います。そして真ん中の窓の下には小さな丸い穴がありませんか?

旅客機の窓に穴が開いている?

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窓に穴!?

ここから機内の空気が漏れ出し飛行機が一気に破壊するのじゃないの!?

しかも窓は数百枚(注)もあるはずだし!!

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが安心して下さい。そしてどうして1箇所に3枚も窓があるの?と疑問に思う方のために旅客機の窓の仕組みについて説明したいと思います。

(注:ボーイング社HPに掲載されているB777-300ER型機の画像を目が痛くなるまで凝視し窓の数をカウントしたところ片側75箇所ありました。なので、両側で合計150箇所になります。

旅客機の窓は3枚で構成されている

旅客機は離陸し上昇すると外気圧は下がり続けるものの、客室内気圧は地上の約80%程度(0.8気圧)に維持されていていると言われます。例えば巡航高度約10,000メートルの外気圧は0.2気圧、すなわち地上の5分の1にまで下がります。なので客室内に比べ外気圧はとても低くなっています。

【参考】旅客機と気圧の関係:JAL - 航空豆知識

この気圧差は窓に相当なストレスを与えることになります。JAL航空豆知識によると、気圧差による航空機表面1平方メートルあたりが受ける力は6トンにもなるそうです。

旅客機の窓は3枚で構成されていて材質はアクリルです。ガラスではありません。そして外側、中央、内側の各アクリル板はそれぞれ役割を担っています。

  • 外側(Outer):外気圧と内気圧(客室内気圧)のはざまで耐えています。
  • 中央(Middle):"Bleed Hole"と呼ばれる小さな穴が下部にあります。
  • 内側(Inner):外側板や中央板と性質が異なり航空機の構造として機能しませんが、旅客が外側板や中央板に直接触れることを防止しています。

旅客機の窓に開いている小さな穴「Bleed Hole」の機能

外側板と中央板には小さな隙間があり、中央板に開いている"Bleed Hole"により内外気圧差のバランスが保たれます。外側板が外気圧に曝され続けるものの、中央板は安全装置として機能します。

また"Bleed Hole"には内外気圧差により生じる湿気を排出し窓が曇ったり凍るのを防止する機能もあります。

実際の「窓」を見てみましょう

アメリカよりボーイングB747型機に装着されていた「窓」を取り寄せていたので分解してみました。手元にある「窓」はInnerを除くOuterとMiddleが一体となっているものです。

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外側(Outer)の窓

  • アクリルの厚さ:約10mm
  • 製造:NORDAM社
  • 製造年月:2006年6月 

アクリルの厚さが約10mmもあります。これが外気圧から旅客機を守ります。

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中央(Middle)の窓

  • アクリルの厚さ:約5mm
  • Bleed Hole直径:約1.5mm
  • 製造:NORDAM社
  • 製造年月:2006年6月

アクリルの厚さは約5mmとOuterに比べ薄いですが、Bleed Holeにより外気圧と内気圧の差を調整します。

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その他の仕様

  • OuterとMiddleの間隔:約6mm
  • OuterとMiddleの組合わせ:厚さ約20mm

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まとめ

旅客が景色を楽しむための窓ですが、旅客機の強固な構造としての役割と強度を担保する仕様となっています。窓無しが旅客機の設計を行ううえでも簡単なのでしょうが、窓の少ない軍用輸送機とは異なり「旅客機」として地点間移動のみならず、移動間も楽しんで貰えるよう尽力したエンジニアの努力の結晶が「窓」にあると思います。ただ単に外の景色を楽しむだけではなく、旅客からも見える場所にある旅客機構造をじっくりと観察してくれれば窓に航空機の構造を担保させたエンジニアの苦労も報われるのではないでしょうか。

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