蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

iPhone Xを航空機で輸送することはできるのか?

リチウム電池を電源とする機器を旅客預け入れ手荷物に対する規制は厳しくなる一方ですが、同様に貨物としてスマートフォンを輸送する際の制限も年々厳しくなっています。例えば2016年にはSamsungGalaxy Note 7の発火騒動があった際、各国の航空会社は一斉に当製品を受託禁止措置としました。

NCA - 日本貨物航空 | リチウムイオン電池の一部受託禁止措置について

 

危険物は原則として航空機に搭載できない

航空機への危険物の搭載は原則禁止となっていますが、IATAが定める規定に基づく場合においては特例として搭載が可能となります。その規定のことを『Dangerous Goods Regulations』(DGR)と呼びます。従い荷主はDGRに従い危険物に応じた制限容量、梱包を確実に行うとともに、危険物を収納した容器には危険物に応じたラベルやマーキングを貼付します。また危険物の種類に応じて国連規格の収納容器を使用しなければなりません。さらに、出発国、到着国、経由地国、使用航空会社がそれぞれに規定する条件も併せて満たす必要があります。そのうえで危険物申告書(Dangerous Declaration)を作成します。

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貨物代理店は荷主より受託した危険物(梱包)及び危険物申告書がDGRに基づいているかを確認します。また貨物代理店より航空会社上屋に搬入された際、航空会社は各航空会社が独自に策定した危険物チェックリストを使用し受託チェックを行わなければなりません。何も問題が無ければ晴れて危険物は航空機に搭載可能な状態となります。

危険物を航空機に搭載する際のポジションも厳格に決められます

危険物そのものは搭載に問題がない状態であったとしても、危険物には隔離基準という概念があり、それを満たさなければ航空機に搭載することはできません。
例えば、危険物は以下の9つの区分に分類されるですが、引火性液体(Class 3)と酸化性物質(Class 5)は同一ULDに積載できませんし、また別々のULDに積載されたとしても、航空機貨物室内で隣り合うULD同士として搭載できません。

これら多くの条件を満たして初めて危険物を航空機に搭載することができるのです。

iPhone Xは航空機での輸送は可能なのか?

さて、少し話が脱線してしまいましたが、リチウム電池を電源とするiPhone Xは通常貨物として輸送できるのでしょうか、それとも危険物として申告しなければならないのでしょうか。

答えは通常貨物になり得ますし、危険物にもなり得ます。

では、なぜ答えがふたつもあるのか説明します。

iPhoneの電源はリチウム・イオン・バッテリーであることがApple社の公式文書より判明しています。また、iPhone Xは「Lithium ion multi-cell batteries」つまりリチウム・イオンの組電池に該当します。iPhone Xのバッテリー仕様は以下の通りです。

iPhone Xのバッテリー仕様

  • Lithium ion multi-cell batteries
  • ワット時定格値は≦100 Wh
  • iPhoneに組入れられている電池はボタン電池ではない
  • iPhoneに組み入れられているmulti cell batteriesは1個のみ

iPhone Xの危険物としての分類

  • 国連番号:UN3481
  • 正式輸送品目名:Lithium ion batteries contained in equipment(組電池)
  • Packing Instruction:PI 967 Section II
  • 1梱包あたりの最大重量(Net Weight):5 kg(旅客機)

に該当することになります。

iPhoneが危険物として輸送されるべきかの判断基準

この場合、以下条件に応じて通常貨物か危険物かに分類されます。

  1. 機器に内蔵された電池がボタン電池のみの場合は危険物としての申告は不要
  2. AWBもしくはHAWBあたりの包装物個数が3個以上であれば危険物申告が必要
  3. 包装物あたりの電池個数が3個以上(組電池)の場合は危険物申告が必要 

つまり、包装物個数が2個以下且つ包装物あたりの電池個数が2個以下の場合はiPhone Xは危険物として申告する必要がありません。(しては駄目)

どうでしょうか、リチウム電池を含む機器の取り扱いはとても複雑です。面倒くさいから適当にパッキングして輸送してしまえ!なんて安易な考えでは危険物事故につながる可能性が極めて高くなります。

参考資料

危険物を起因とした航空機事故の紹介

荷主が安易な考えで危険物を無申告で航空貨物に仕立て上げることで、重大な事故に直結してしまうであろうことは簡単に想像できます。過去に発生した危険物関連を起因とした航空機の事故について下記記事をご案内します。

まとめ

リチウム電池は簡単に発熱し発火してしまう危険性がある一方で、現在の環境下ではリチウム電池無しでは生活が成り立ちません。普段使っていて何も問題が無いから航空機でスマートフォンを送ってしまおうなんて考え方をしていると大事故に直結してしまいます。いま航空会社では無申告危険物、つまり本来危険物に該当するものであるはずなのに適切に危険物として申告されていない貨物の発見に躍起になっています。それは当然、安全は全てに優先されるからです。特に旅客には数百名の旅客が搭乗しているので、危険物を輸送しようとしている方がいれば適切な梱包と申告をお願いいたします。

 

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IATA Dangerous Goods Regulations 59th Edition 2018

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