蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

旅客機に関わるさまざまな重量

過去の記事でもお伝えしましたが、旅客機にはさまざまな重量が関係し、いずれも旅客機の運行には必要不可欠となっています。

では旅客機の運行にはどんな重量が関係しているのか深掘りしたいと思います。

航空機を運航する際の最大重量

旅客機が運航する際に関わる重量で、航空機の構造・強度を鑑み絶対に超えてはならない重量のことです。もしこの重量を超過し運航したのならば、航空機は離陸失敗、空中分解、着陸失敗に至る可能性があります。従い、旅客機運航に関わる各セクションは正確な重量を航務部門に報告し、航務部門はそれぞれの重量を基に適切なWeight & Balanceを行う必要があります。

Maximum Zero Fuel Weight(MZFW)

(航空機自重+Crew重量+機内食等重量+ペイロード重量)の最大重量です。ここには燃料重量は含まれていません。

Maximum Taxi Weight(MTW)

(航空機自重+Crew重量+機内食等重量+ペイロード重量+タキシングする際の燃料重量)の最大重量です。タキシングする際の燃料重量というのはスポットでのエンジンスタートから離陸滑走を開始するまでに消費される誘導路走行時の燃料重量も含まれます。ある航空会社が保有するB777-300ER型機のMTWは352,441kgとなっています。

Maximum Take Off Weight(MTOW)

(航空機自重+Crew重量+機内食等重量+ペイロード重量+離陸滑走する際の燃料重量)の最大重量です。ある航空会社が保有するB777-300ER型機のMTOWは351,534kgとなっています。つまり、もしMTWに近い重量がとあるフライトに設定された場合、MTWからMTOWを差し引いて算出される907kgもの燃料を地上走行中に消費する必要があります。

Maximum Landing Weight(MLW

(航空機自重+Crew重量+機内食等重量+ペイロード重量+残燃料重量)の最大重量です。ある航空会社が保有するB777-300ER型機のMLWは237,682kgとなっています。つまり、もしMTOWに近い重量がとあるフライトに設定された場合、MTOWからMLWを差し引いて算出される113,852kgもの燃料を地上走行中に消費する必要があります。先日日本航空JFK向けフライトがエンジンからの出火にて羽田空港に引き返した事例がありますが、この際は離陸間もない機体がMLWを下回る重量にになるまで房総半島沖上空を数回旋回し燃料を放出していました。MLWの設定は航空機の着陸装置であるタイヤ周辺の強度が関係しています。

各フライト毎に設定される重量

各フライトでは前述のMaxumum Weight(最大重量)を超過しない範囲で重量が設定されます。Maximum Weightは航空機の構造・強度に応じ設定されましたが、各フライト毎に設定される重量は到着空港までの距離や旅客数、貨物重量、天候、上空気流、気温、滑走路路面状態、滑走路風向き、気圧等の多くの因子に基づき決定されるので、決して同じ重量で運航されることはまずないでしょう。では、某航空会社のB777-300ER型機による米国東海岸向フライトにて設定される重量を参考に深掘りしていきたいと思います。 

Dry Operating Weight(DOW)

そのフライトに必要な(航空機自重(BEW:Basic Empty Weight)+Crew重量+機内食等重量(Pantry))の合計です。ここでは174,400kgとなります。

Total Traffic Load(Payload)

旅客重量+手荷物重量+貨物重量+郵便物重量=44,326kg

ここで旅客重量に関して疑問を持った方は鋭いです。空港のチェックインカウンターでは体重を計測しませんし、パスポートにも体重は記載されていませんよね?なのにどうして旅客重量が算出されるのでしょうか?この答えは、実重量を基に算出しておらず、航空会社が独自で設定した任意の体重を使用しています。つまり男性大人であれば一人あたり75kgと設定しているのです。

Zero Fuel Weight(ZFW)

Dry Operating Weight(DOW)とPayloadの合計です。運航にあたっての無燃料重量です。ここでは218,726kgとなります。

Take Off Fuel

離陸滑走する際の機体内の燃料重量です。A地点からB地点までの消費燃料のみならず、緊急時の目的地変更等も鑑み搭載燃料は決定されています。このフライトにおけるTake Off Fuelは115,361kgと設定されています。搭載燃料だけで115トンです、凄いですね。

Take Off Weight(TOW)

Zero Fuel Weight(ZFW)とTake Off Fuelの合計です。ここでは334,087kgとなります。TOWによって離陸滑走距離も変わってきます。重くなればなるほど離陸滑走距離は長くなるので、滑走路長さに応じたTOWの設定が必要になります。つまり、滑走路が短くTOWを低く抑えないといけない場合、Take Off Fuelを少なくするわけにはいかないので、ZFWで調整するしかありませんが、その場合は一般的にPayloadの貨物重量で調整し貨物搭載重量を減らすことになります。それでもTOWを抑える必要がある場合は手荷物、旅客の順で減らすことになります。従い、万が一の場合、格安航空券でチケット購入された方はプライオリティが一番低いかもしれないので要注意です。

Trip Fuel

A地点からB地点までの消費燃料重量です。JFKまでの消費燃料は103,839kgと見積もられています。

Landing Weight(LAW)

到着地空港の滑走路に着陸する際の重量です。このフライトの場合、TOWからTrip Fuelを差し引いて230,248kgでした。TOWと同様、到着地空港の滑走路長さに応じて設定が必要です。LAWが大きいとオーバーランしてしまう可能性があります。

まとめ

旅客機に関わる重量は大きく分けて航空機の構造・強度に基づくMiximum Weightと各フライトに応じて算出されるWeightの2種類があります。更に重量は出発前地上重量、離陸滑走時重量、着陸時重量等に分別され、各フライト毎の重量は航続距離や気象条件、気圧、風向き、滑走路状態など様々な因子に基づき決定されます。離陸滑走路の距離が短い場合や、特定地域の上空通過が出来ず遠回りし消費燃料が多くなりそうな場合はPayloadにて重量を調整することになります。なお、個人的な意見ですが、JFKまでの搭載燃料はTOWが334トンに対して115トンもあり、離陸時重量の約3分の1が燃料重量であることに衝撃を受けます。

参考記事

www.fusafusagoumou.jp 

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