蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

輸出貨物の空港搬入カット時間を厳守しなければならない理由

フレイトフォワーダーにお勤めの方であれば気になっていることかもしれませんが、航空会社上屋の輸出貨物カット時間はどのようにして決められているのか、前回説明したWeight & Balance(ウエバラ)と絡めてお伝えしたいと思います。 

一般貨物(非危険物、非特殊貨物)であれば、どの航空会社も輸出貨物カット時間はフライト出発前の180分前から120分前に設定されていることが殆どだと思います。例えば、成田空港の全日空上屋は「出発予定時刻の120分前」となっています。(参考:ANA CARGO)では、航空会社上屋に貨物が搬入された後の工程について説明したいと思います。

貨物搬入後の工程

  1. 航空会社上屋の受託担当者はフレイトフォワーダーが貨物搬入時に持参されたLDRをもとに貨物の受託チェックを行います。混載貨物の場合はHAWB番号毎に受託チェックします。
  2. LDR記載貨物個数と搬入貨物個数が当たれば、上屋内に貨物を引き込みます。受託後直ぐにULDにビルドアップするのであれば、その貨物を積み付けるULDの側まで貨物を搬送します。
  3. ビルドアップ担当者は、航空会社担当者からの指示に基づき、指定されたULDに貨物を積み付けします。指示通りの積み付けが完了後、コンテナであればドアと閉じ、またパレットであればネットを締めます。
  4. ビルドアップが完了したULDは計量されます。通常、ビルドアップはULD搬送機材(ドーリー)の上で行われるので、ドーリーごと計量器載せ、計量結果からドーリー重量を差し引いた重量がULD重量(ULD Gross Weight)となります。
  5. ULD重量は航空会社の航務部門に送付され、Weight & Balanceにより適切な貨物室内におけるULD搭載位置が決定されます。この時に発行されるのが「Loading Instruction Report(LIR)」であり、LIRには貨物室内におけるULD搭載位置が記載されています。
  6. 計量後に航空会社上屋より搬出されるULDは航空機搭載担当者によってピックアップされ機側に並べられます。
  7. 航空機搭載責任者(Load Master)の指示により、LIRに基づきULDが貨物室内に搭載されます。
  8. 旅客手荷物が収納されたULDが搭載され、航空機の貨物室に設置されたカーゴドアが閉じます。
  9. お客様が全て搭乗後、航空機ドアが閉じ、搭乗橋(Passenger Boarding Bridge : PBB)が外され航空機がスポットを離れます(Block Out)。ちなみに、いわゆる航空機の出発時間はブレーキがリリースされBlock Outした時間のことを言います。

f:id:fusafusagoumou:20171002235323p:plain

各工程に設定されたタイムライン

一般的に航務部門にULD重量を報告する期限は便出発の120分前から60分前となります。時間が一定ではないのは航空会社によって規定が異なるためです。また、航空会社によっては航務部門が本国以外の場所に設置されていることがあります。例えば、日本航空であれば日本に航務部門がありますが、香港を拠点とするキャセイ・パシフィック航空(CX)の航務部門はポーランドワルシャワにあるWeight & Balanceを専門的に行う企業に委託されていて、そのような専門企業のことを「CLC : Centralised Load Control」と言っています。ちなみにCXのCLCはAir Dispatchという社名です。

また、便出発の遅くとも60分前までには搭載担当者にULDを引き渡さなければなりません。このことをデリバリーと言います。なお、航空会社上屋と搭載担当者がULDを授受する際に使用する授受票のことを「ULD Delivery Sheet」と言ったりします。 

だから輸出貨物カット時間は厳守しなければならない

従い、貨物が搬入されてからULDにビルドアップを行い、遅くとも便出発60分前までにULD重量報告やULDデリバリーが必要なことを考えると、航空会社上屋での貨物受託チェック及びULDビルドアップ時間のことも鑑み120分前の輸出貨物カット時間は妥当であると言えるのではないでしょうか。

貨物専用機と異なり、旅客機は絶対に遅延出発させてはなりません。特に羽田空港では分刻みの航空管制やスポット割り当てがあり、遅延することで他便へ影響してしまうのみならず、到着地においてさらにトランジットする旅客が予定便に搭乗できなくなるといった影響も考えられるからです。

航空輸出、特に旅客便に搭載する貨物に関しては常に時間との戦いです。かと言って安全・定時性を確保すべく気を抜くことなどあり得ませんので、フレイトフォワーダーにお勤めの皆様や輸出者の方々にもこの状況をご理解して頂き、少しでも早い貨物搬入を心掛けて頂ければと思います。

なお、別の機会にLIR(Loading Instruction Report)の役割についての詳細を説明したいと思います。

フレッシュマンのための航空貨物Q&A100問100答【第6版】

フレッシュマンのための航空貨物Q&A100問100答【第6版】