蒼空に近づきたくて

航空業界に生きるアラフォーサラリーマンが航空業界に興味を持ってくれる方々の為に航空機運航に関する豆知識をお伝えしていきたいと思っています。特にニュースとなる航空関係の話題を深堀りし背景等を解りやすく解説するように努めます。航空機運航には多くの「どうして?」が付きまとうので、皆さんの疑問のヒントになれるようなブログサイトを目指していきたいです。

安全を確保するための航空機に関わる重量とバランス

航空会社が旅客機の運行に関しての一番の優先順位は何よりも安全です。その次に来るのが定時運航の確保、そしてコストの掛けない経済的な運航に続きます。ここでは、安全と経済的運航を両立させるために必要な航空機の重量について説明したいと思います。

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航空機の安全の確保

いまでこそ炭素繊維などの軽量で丈夫な素材が航空機を構成する材料として使用されているものの、未だに人々の中には"鉄の塊が飛ぶわけない"と言う方もいます。航空機が飛ぶのは航空力学に基づくものなので、科学を信じるのであれば安心して搭乗することができるものの、航空力学を担保するために必要な重量というものがあります。この重量を超えて運航することになれば、飛行機は離陸すらできず、滑走路をオーバーランし墜落に至ってしまいます。その為に、旅客機の運行に携わる人たちは、航空機の重量や航空機に搭載する物の重量には細心の注意を払うことになります。

経済的な運航の確保

航空会社は公共交通機関であるものの、私企業でもあるので利益の追求は当然のことです。安全を確保するための投資は必要ですが、一方でコストを下げるための努力を怠る訳にはいきません。旅客機(B777-300ER型機)が例えば羽田空港からニューヨークまで飛行するとなると、片道で約100トンものジェット燃料を搭載しなければなりません。私たちの普段の生活の中でも、出来るだけ単価の低いガソリンスタンドを探したり、急発進を控えたりしてガソリンの消費を抑えるためのエコ運転を心掛けますが、航空機も同様にエコ飛行を求められるのです。旅客機が経済的に飛行できるためには約3度機首を上げるのが効果的と言われているようです。

ところで、飛んでいる飛行機が経済速度まで推進力を絞るわけですから、そのままでは前方に進む力が弱くなり、飛行機は降下し始めてしまいます。そこでFMC(フライト・マネジメント・コンピュータ)は飛行制御用のコンピュータに指令を出して機体前方を上げるように指示します。そうすることで飛行機は機首を上に持ち上げながら前に進んでいくような格好になります。犬掻きで泳ぐような状態といえばよいでしょうか?これが飛行機が最も経済的に飛ぶときの飛行姿勢となります。この時の進行方向に対する機体の角度は約3度といわれています。機体全体が3度傾いているわけですから、客室乗務員が機内前方から後方へカートを押すときは楽なのですが、逆は大変重くなると聞いたことがあります。また、皆さんのシートについているテーブルも実は3度ほど前下がりについているんですよ。(引用:日本航空(株)航空豆知識)

https://www.jal.co.jp/entertainment/knowledge/agora24.html

航空機の強度

航空機はジュラルミン炭素繊維等の素材を使用し作られているため強度という概念も必要になってきます。基本的に航空機は輪切り状のフレームの集合体が筒状になっているものなので、フレームの一つひとつに掛かる重量等も鑑み、強度を担保するために搭載可能となる貨物の重量や航空機の重量が決められています。

航空機の重量に関する緒元

前述した通り、航空機の構造上、強度を担保するために航空機の重量が決められているのですが、ある航空会社のB777-300ER型機の制限重量について説明します。

  • Maximum Zero Fuel Weight : 237,682 kg
  • Maximum Taxi Weight : 352,441 kg
  • Maximum Takeoff Weight : 351,534 kg
  • Maximum Landing Weight : 237,682 kg

例えば、上記のTaxi WeightとTakeoff Weightはそれぞれ、前者はスポットから離れて地上走行する際の最大重量であり、後者は離陸滑走を始める時点での最大重量となります。ちなみにLanding Weightにも制限が設定されており、これは航空機の主脚等着陸装置の強度を担保するために着陸時用として設定された重量です。 

航空機はこれらMaximum Weightを超過し運航することは絶対に許されません。ちなみに、Zero Fuel Weightというのはそのフライトに関わる燃料を省いた重量であり、航空機自重+Crew重量+機内食等重量+ペイロード(旅客、旅客荷物、貨物)です。

なお、ここではあくまでもMaximum Weightについて述べましたが、これは航空機メーカーによる緒元であり、実際の運行の際は気象条件(高度、風向、気温)や滑走路状態にてMaximum Weightを超過しない範囲で各重量が決まります。

Weight & Balance(ウェイト・アンド・バランス)

航空機は三次元を飛行する物体ですので、航空機のバランスには重量と同様に細心の注意が必要です。大体の航空機は主翼の付け根あたりに重心があるのですが、安全運航を行うために重心からどれだけ離れても安全飛行が可能となるという基準があります。航空機重量とバランスを考えて安全飛行を行うための重量決定及び搭載物の搭載位置を決定するのがWeight & Balanceです。日本の航空業界では"ウエバラ"と呼ばれていますが、各フライトにて必ず行われ、出発前には機長の承認を得なければなりません。

(参考)ロードコントロール | 業務紹介 | 株式会社JALスカイ

 

さて最後に、有名ヘヴィ・メタルバンド「アイアン・メイデン(Iron Maiden)」のボーカルでありパイロット資格も持つBruce Dicksonがウエバラの重要性について説明する動画をご覧になって頂こうと思います。この動画は航空会社内の教育にも使用されています。ちなみに彼は前回行われた日本ツアーへはバンドカラーにペイントされたB747型機にて来日しましたが、その際の操縦も彼が担当していたと言われています。


THE IMPORTANCE OF WEIGHT & BALANCE FOR SAFETY 

最新 航空実用ハンドブック―航空技術/営業用語辞典兼用

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